挑戦的作品連発のNHKドラマ  『ここは今から倫理です。』など異色作が生まれる理由

NHKドラマ、異色作が生まれる理由

 教室で性行為にふける高校生カップル。そこに現れたダークな色調の男。倫理の教師である彼は静かな口調でふたりに問う「合意ですか?」。NHKのよるドラ『ここは今から倫理です。』はそんな風に始まった。

 今、いや、ここ数年、NHK発のドラマが面白い。連続テレビ小説と大河ドラマ、時代劇を除いた現代ドラマのカテゴリーだけでも、冒頭の「よるドラ枠」に加え、「ドラマ10」「土曜ドラマ」「Eテレ枠」「BS枠」などバリエーションに富んだ作品がつねにO.A.され、ドラマ見巧者たちから注目を集めている。

 なぜNHK発のドラマは視聴者の心に刺さるのだろうか。その理由を考えていきたい。

スポンサーへの忖度がない

 ご存じの通り、NHK=日本放送協会、いわゆる公共放送である。民放の番組がスポンサー企業からの広告費で制作されているのに対し、NHKの番組制作費は国民から徴収した受信料で賄われる。

 有料放送やNetflixなどのVODサービスを除いた民放番組には必ずスポンサーが付き、番組制作に多大な発言力を持つ。ドラマの内容がスポンサー企業のイメージを損ねていたり、政治的に傾いている(と判断された)ものであれば企画そのものを通すことが困難だ。

 たとえば、サスペンスや事件ものであっても、スポンサーに自動車メーカーが入っている場合、交通事故のシーンを入れることは難しいし、食品会社がCMを出稿していれば、毒物混入で登場人物が死亡……などという場面は控えざるを得ない。

 その点、NHKには上記のような縛りがない。スポンサーや局と企業とを繋ぐ広告代理店の意向に振り回されずドラマを制作できるのである。

細部まで丁寧に作りこむ制作現場

 NHKドラマに共通する特徴が細部にこだわる丁寧さ。例を挙げると、作中に喫茶店やカフェの場面が出てくれば、必ずスタッフロールに「コーヒー指導」などのクレジットが入る。さり気ない場面でもプロが現場に入って俳優に所作等をレクチャーしているからだ。

 民放では「大体こんな感じ」で済まされがちなところにも手を抜かないのがNHK流。現在NHK-BSで放送中の『カンパニー』では、主人公の青柳(井ノ原快彦)が芸能事務所を訪問するシーンで、アイドルグループの作りこまれたPVがモニターで流されていた。一瞬しか映らないPVのために、水辺での夜間ロケを敢行するこだわりが、NHKドラマの丁寧さと緻密な画作りを証明している。

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