『俺の家の話』はただの愛情物語ではない 宮藤官九郎が描く“お金”と“介護”の現実

『俺の家の話』はただの愛情物語ではない 宮藤官九郎が描く“お金”と“介護”の現実

 1月22日から“いよいよ”スタートした『俺の家の話』(TBS系)。“いよいよ”と書いたのは、主演の長瀬智也が3月末に事務所を退所し、裏方の仕事につくため、現時点では最後の主演作になると思われると。そして、それが『池袋ウエストゲートパーク』『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』(いずれもTBS系)でタッグを組んできた宮藤官九郎の作品だということ。また、宮藤にとって、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』以来の連続ドラマだということ(間に単発のNHKスペシャルドラマ『JOKE~2022パニック配信!』を挟むが)があるからだ。

 今度の話は、家族、それも父親と長男の物語である。長瀬演じる主人公の観山寿一は、能楽の人間国宝の観山寿三郎(西田敏行)の長男で、子供の頃から稽古を重ねるも、一度も父から褒められたことがなかった。唯一、父親と楽しい時間を過ごせたのが、テレビでプロレスを観ていた時間であり、寿一は、父に認められたい一心で家を飛び出し、父の好きなプロレスの道に進み、それ以来22年も家に帰っていなかった。しかし、父親が危篤と聞きつけ、実家にかけつけるも、あっけなく父は目を覚ます。

 父親と長男の確執だけの物語であれば、それを乗り越えて、「家族の愛情を取り戻しました」で終わるのが多くの物語かもしれないが、宮藤官九郎だけに、そんなものでは終わらない。

 第1話から、寿一はプロレスラーをきっぱりと辞め、宗家を継ぐことを腹に決める。そして寿三郎が介護なしでは生活できないことが明らかになる。さらに、あろうことか、寿三郎がさくら(戸田恵梨香)という女性を婚約者であると門弟の前で紹介し、遺産を譲渡すると宣言する。

 寿一は父のたっての願いで、トイレやおむつ交換を毎日担当することになる。寿一は弱った父親の裸を見て複雑な感情を抱く。同じ時期、寿三郎は認知症のテストを受け、自分の気づかぬところで、体だけではなく認知の部分でも衰えていることを知り愕然とする。それを見て、寿一は父親が弱っているということを、はっきりと受けとめる。

 受け止めたあとに、寿一はもう一度父親を風呂に入れる。そのときにはもう、かつての戸惑いはなくなっている。逆に寿三郎は照れやバツの悪さから寿一に悪態をつく。めまぐるしく様々な出来事が起こる中で、その出来事を追うだけでなく、父と息子の微妙な感情の変化が描かれているこのシーンを観ると泣けてくる。泣けてきたのは、第1話の時点で登場人物たちのキャラクターや背景が視聴者に入ってきていたからだ。

 第2話では、能楽の宗家は、裕福に見えてワキ方、狂言方、囃子方、裏方を支えており「真ん中で優雅に舞っている人間が、実は一番貧乏なのだ」というナレーションから始まる。また、寿一もプロレスを辞め、養育費を払うにも金がなく、寿三郎の芸養子である寿限無(桐谷健太)に借りようとしたところで、宗家には金がないという現実を知る。

 一方で、介護ヘルパーのさくらには、後妻業の女である疑惑が浮上。しかし、彼女は観山家の面々に問い詰められると、あるがん患者に介護ヘルパーとして、「仕事」で献身的に介護をした結果、財産の相続をしたことがあると、あっさり告白するのだった。そして、寿三郎に対しても愛情はなく、以前と同様に、介護の必要な寂しい老人として見ているということを告白する。

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