韓国ドラマはなぜ日本リメイクされやすいのか 大倉忠義主演『知ってるワイフ』を軸に考える

韓国ドラマはなぜ日本リメイクされやすい?

 さて、リアルが共感を生んだリメイク作品といえば、韓国ドラマ『ミセン-未生-』(2014年tvN放送)が挙げられる。2016年にフジテレビ系で『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』として放送され、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)が主演、キーマンである上司を遠藤憲一が演じた。

 囲碁のプロ棋士の夢に挫折し、学歴も社会経験もない主人公が、総合商社でひたむきに仕事や自分と向き合う姿を描いたヒューマンドラマ。この裏にも、非正規雇用問題、出世競争、社内不正、パワハラ、女性蔑視などの問題が描かれている。社会人である多くの人が、その辛さや理不尽さに深く共感し、立ち向かう姿に感動しただろう。そして、その社会問題は隣国の日本にも共通するものが多い。わかりやすい役柄と、はっきりと伝えてくる台詞の脚本が、我々にとって身近なリアルとなって共感を呼びやすくしている。この“共感”こそ、視聴者が興味を持つきっかけになることが多く、社会性の高い物語が多い韓国作品がリメイクされやすい要因のひとつといえる。

 また、韓国ドラマ作品におけるもうひとつの魅力は、キャラクター設定にある。主役だけでなく、サブキャラクターが作品を盛り上げるのが、韓国ドラマの面白さだ。リメイク版『知ってるワイフ』では、謎の男を生瀬勝久、澪の母親を片平なぎさが演じ、味のある俳優たちがキーマンとなるキャラクターを際立たせている。元春と同じ会社で新人社員の篠原恭介(未澤誠也)は、新人あるあるを披露し、ゆとり世代キャラを確立。スピンオフ作品として『知ってるシノハラ』がフジテレビ公式動画配信サービスFODで配信されており、本編では描ききれないサブキャラクターたちのストーリーもしっかり描き切ろうとする気概を感じる。

 放送中の『知ってるワイフ』では、澪と再び巡り合うことで、澪の笑顔を奪ったのは自分だったことに気づいていく元春の姿がみられる。ドラマの展開に合わせ、観る人が大切なことへの“気づき”に辿りつくように仕組まれた本作。そこまで導いてくれる韓国ドラマの完璧なストーリーは、今後もリメイク版として生まれ変わり、日本のエンタメを盛り上げていくことだろう。

■ヨシン
韓国作品中心に愛を叫ぶ。一日三膳三ドラマをモットーに、毎日作品に触れる。ソウルフードはトッポッキ。ヨシンは韓国語で「女神」のことです。悪しからず。Twitter

■放送情報
木曜劇場『知ってるワイフ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送 
出演:大倉忠義、広瀬アリス、松下洸平、川栄李奈、森田甘路、末澤誠也(Aぇ!group/ジャニーズJr.)、佐野ひなこ、安藤ニコ、マギー、猫背椿、おかやまはじめ、瀧本美織、生瀬勝久、片平なぎさ、小関裕太
脚本:橋部敦子
編成企画:狩野雄太
プロデュース:貸川聡子
演出:土方政人、山内大典、木村真人
音楽:河野伸
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ

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