“天才的な泥棒”がフランス流で描かれる 『Lupin/ルパン』に込められた原作の“エスプリ”

“天才的な泥棒”がフランス流で描かれる 『Lupin/ルパン』に込められた原作の“エスプリ”

 イギリスに名探偵シャーロック・ホームズがいるのなら、フランスには怪盗紳士アルセーヌ・ルパンがいる。ともにそれぞれの国を代表する、犯罪を描いた娯楽小説だ。近年では、2010年より放送されている、シャーロック・ホームズのシリーズを翻案して舞台を現代に移し替えた、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『SHERLOCK/シャーロック』が大きな話題となったが、本作『Lupin/ルパン』もまた、舞台を現代のフランスに移しているように、まさに同様の試みをルパンを題材に行ったドラマ作品といえよう。

 アルセーヌ・ルパンというキャラクターの知名度や人気は凄まじく、本作『Lupin/ルパン』は、2021年の初めにNetflixで配信がスタートすると、一気に視聴数世界ランキングのトップを記録するに至った。ここでは、そんな本作のシーズン1の内容を振り返り、何が描かれていたのかを読み解いていきたい。

 本作の大きな特徴はルパン役に、ハリウッドでも活躍するフランスの人気俳優オマール・シー(『最強のふたり』 、『ジュラシック・ワールド』)をキャスティングしていることだ。「現代の伊達男」と呼びたくなるような、長身で端正な容姿と洗練された身のこなし、そしてダンディーな声などの魅力が、ルパンという世紀のキャラクターと重なったことで、視聴者の心をつかむ結果につながったといえよう。

 原作のルパンは白人だが、その役柄を黒人のキャストが演じるというのも新しい。イギリスの長寿スパイ映画『007』シリーズにおける主人公ジェームズ・ボンドのキャラクターを、今後アフリカ系の俳優が演じる可能性が取り沙汰されているように、フランスやイギリスにおけるマイノリティである人種が、その国の象徴的な存在になるというのは、多様性を後押しする意味においても現代的な取り組みであり、近年同時に高まっている排外的な思想への文化的なカウンターともなっている。

 ルパンといえば神出鬼没の天才的な泥棒であり、鮮やかな手口でお宝を盗み出し、その犯罪行為自体を楽しむ“趣味人(ディレッタント)”である。警戒厳重な刑務所にも自由に出入りし、社会の弱者を助ける義侠心を持った存在だ。そんな怪盗紳士の冒険を描けば、どうしても荒唐無稽なものになりそうだ。しかし、本作は現代のフランスを舞台に、このようなルパンの要素を、できる限り現実の世界にフィットするかたちで表現されている。ドローンやAIアシスタントなどのガジェットが駆使されたり、自転車のフードデリバリーサービスなど、流行を利用した現代的なトリックも見られる。

 オマール・シーが演じるルパンも、その本名はアサン・ディオプというセネガルからの移民の息子であり、子どもの頃から読んでいるアルセーヌ・ルパンの小説に触発されて怪盗紳士を目指すことになるのだ。つまり、彼はアルセーヌ・ルパンそのものではない。その生き方に憧れる一人の男なのである。そんなアサンは、盗みの技を駆使しながら、警察署や刑務所に潜入し、無実な罪を着せられて無念の死を遂げた父親の事件の真相を追うために奔走することで、ルパンに近い存在となっていく。

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