“小学生”の杉野遥亮たちをずっと観ていたい じつは“社会派ドラマ”『直ちゃんは小学三年生』

じつは社会派ドラマ『直ちゃんは小学三年生』

 このように、子どもならばまだ許されるものの、大人ならばそうはいかないことだらけなのがこの世の中だ。直ちゃんたちはまだ“2分の1成人式”すら経ていない幼子で、世の中は知らないことだらけ。好奇心旺盛な彼らは一喜一憂しながら世間というものを知っていくが、ここで浮かび上がってくるのが“無知は罪”ということ。これは本作をとおして描かれているものでもある。大人が小三を演じることで、この事実が顕在化するのだ。

 たとえば第3話では、鎌田(堀田茜)と塩山(水嶋凜)という女性キャラクターが登場した。彼女たちも小三だ。この鎌田に向かって、「掃除は女の仕事」と得意げにてつちんは言い放つ。父からそう教わったらしい。そして、山ちょの将来の夢が“お花屋さん”であることから直ちゃんたちの会話は飛躍し、きんべとてつちんは「男らしくない」「(もし山ちょが女だったら)気持ち悪い」とまで口にしてしまう。さらに直ちゃんは、ほかの男子たちから体のことをからかわれた鎌田に対し、“良かれと思って”母親の下着を贈ろうとして余計に反感を買い泣かせてしまう。直ちゃんからすれば、“そんなつもりじゃなかったのに”である。

 小三の世界はまだまだ狭く小さいもの。あの頃を振り返ってみれば、筆者も反省することだらけだ。相手がなぜ泣いているのか分からなかったこともたくさんある。けれども、いまなら分かることは多い。少なくとも歳を重ねるごとに、その知識と経験を得てきた。それでもなお、直ちゃんたちのような間違いを犯すことがあるかもしれない。まだ幼いはずの直ちゃんたちが気づき、学び、成長していく姿にハッとさせられている方も少なくないのではないか。本作が描いているのは、誰もがとおってきた“あの頃”への愛しさだけではないのだ。

 映画『ウーマンウーマンウーマン』(2019年)などを手がけてきた監督の近藤は、なにげない日常や会話のなかで人々がズレていく、“ディスコミュニケーション”を描くのに長けた存在だ。“小三の世界”を描いた『直ちゃんは小学三年生』は、まさに彼の得意分野である。なにせ小学生は、よく“ズレる”。ストーリーラインや細かなアイデアなども、近藤本人が出しているようだ。現代の問題を「笑い」とともに描く、じつは「社会派」なのではないか……と、筆者は思っている。ともあれ、残り3話、直ちゃんたちの愛くるしい成長譚を見守りたい。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
ドラマ25『直ちゃんは小学三年生』
テレビ東京、テレビ大阪ほかにて、2021年1月8日(金)スタート 毎週金曜深夜0:52~1:23放送(全6話)
出演:杉野遥亮、渡邊圭祐、前原滉、竹原ピストル、平埜生成、やついいちろう(エレキコミック)、堀田茜、水嶋凜、岡山天音ほか
監督:近藤啓介
脚本:熊本浩武
音楽:遠藤浩二
エンディングテーマ:小山田壮平「恋はマーブルの海へ」(Speedstar Records)
プロデューサー:太田勇(テレビ東京)、青野華生子(テレビ東京)、向井達矢(ラインバック)
制作:テレビ東京、ラインバック
(c)「直ちゃんは小学三年生」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/naochan/
公式Twitter:@drama25_202101
公式Instagram:@drama25_202101

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