2021年はこの映画に期待? 今年スクリーンで観られそうなハリウッド大作映画の共通点
2021年公開決定作品の共通点 あの横綱スタジオに業界は頼るしかない?
さて、ここまで2021年公開予定の14作品を駆け足でご紹介してきたが、実はこのラインナップには隠れた(恐ろしい)共通項がある。配給会社に注目していただきたい。
まず、『ラーヤと龍の王国』と『ジャングル・クルーズ』は明らかにディズニーだし、『ブラック・ウィドウ』と『エターナルズ』といったMCU作品もディズニー。しかし、『キングスマン:ファースト・エージェント』に『フリー・ガイ』、そして実はなんと『ノマドランド』そして『ウエスト・サイド・ストーリー』もディズニー配給作品となっているのだ。厳密に言えば、この4作品は20世紀スタジオの作品。もともとは20世紀フォックス映画として親しまれていたが、2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーに買収され、社名が変更されている。つまり、20世紀スタジオ=ディズニーなのだ。
ディズニーが14作品中8作品も占める中、次に多いのは『トムとジェリー』、『モンスターハンター』、『GODZILLA VS. KONG』のワーナー・ブラザースだが、こちらはHBO Max問題が収束していないため業界内で未だ槍玉にあげられている。ほか、『007』と『ワイルド・スピード』がユニバーサルのもので、インディペンデントのスタジオは『ミナリ』のA24たった一つという状態。
20世紀スタジオのみならず、ピクサーやルーカス・フィルム、マーベル・エンターテイメントなどが傘下にあるディズニーが業界で圧倒的パワーを持っていることは、これまでも、そしてこれからも歴然としていることだが、改めてコロナ渦において映画が撮影できて(予算と安全対策に余裕があって)、なおかつ劇場以外の公開プラットフォームが確保されているスタジオは強いなと感じる。ワーナー・ブラザースだって、これと同じことをHBO Maxでしようとしているのだから。
そうなってくると、ハリウッドのマーケットはますます大手の独占状態に近づいていくし、A24などのインディペンデント寄りのスタジオが苦しい思いをしそうだ。ディズニーのような、コロナ渦でも作品を出し続けられる馬力のある会社は少ないし、全体的にハリウッドでは新作映画が枯渇状態になる。それが意味することは、日本にも新作映画が降りてこなくなること。シネコンでかけられる映画が減っていき、劇場自体の存続問題に関わるということだ。そのため、現在は欧米に対して比較的パンデミックが収まっているアジア圏の作品がマーケットで人気なのだそう。日本では再び韓国ブームが訪れているが、映画製作を今欧米よりも進められるアジア圏の作品が今後劇場に増えていくことは必然だろう。2020年は映画業界にとって苦難の1年だったが、2021年こそ踏ん張りどきの1年になるのかもしれない。
■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。『ノマドランド』を早く観たい。Instagram/Twitter
■公開情報
『ブラック・ウィドウ』
4月29日(木・祝)公開
監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン、レイチェル・ワイズ、フローレンス・ピュー、デヴィッド・ハーバー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021