杉咲花、『おちょやん』で生き生きとした表現 演技と方言で証明する若き実力

杉咲花が朝ドラで証明する若き実力

 鈴を転がすような声で気持ちの良い大阪言葉が響いてくる。朝から気分が晴れやかになる声の主は、NHKの連続テレビ小説『おちょやん』で主人公・千代を演じる杉咲花だ。『おちょやん』は上方女優の浪花千栄子をモデルに、貧しい家に生まれたヒロインが女優を志し、芝居の世界に足を踏み入れる様子を描く。

 杉咲の演じる千代は、キッパリとした物言いと明るい笑顔が印象的。さらに杉咲は東京出身にも関わらず、流れるような船場言葉と、時に千代が幼少期に過ごした南河内の河内弁を巧みに使い分ける。この流麗な方言の響きがまた心地よく、それを杉咲ならではのリズミカルなセリフ回しで生き生きと表現してくれる。また、この方言で、キッパリと自分の意見を言う千代のたくましさからは勇気をもらえるのだ。父親から奉公に出され、おまけに父のせいで借金取りに嫌がらせをされたとしても、挫けず何度でも立ち上がりグッと前を向く姿はまさに、今のコロナ禍の中で踏ん張る力を分け与えてくれるだろう。杉咲には、こうした打たれ強く爽やかな役が本当によく似合う。

 さらに杉咲の芝居は、テンポが良い。それ故にコミカルなシーンではきちんと視聴者を“笑わせる”ことができるのだ。第23話での、撮影所に忍び込もうとしては守衛の守屋(渋谷天外)に止められるシーンは、『おちょやん』公式Twitterで、杉咲と渋谷天外のアドリブだったことが明かされており、杉咲の機転の良さが垣間見えた。他にも千代が口達者なキャラクターであることを生かし、思わずクスリと笑ってしまうシーンや、胸がスカッとするようなシーンも多く見られる。その度に杉咲は持ち前のテンポの良さで魅力を放ち、視聴者の心をグッと作品に惹きつけるのだ。

 そんな杉咲にとって大きな転機となったのが、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)での連続ドラマ初主演だろう。人気ドラマ『花より男子』シリーズの続編にあたる『花のち晴れ』は、当時、多くの視聴者の注目を集めた。杉咲は貧乏暮らしをバネに頑張る女子高生役を演じていたことから、逆境をパワーに代える役はすでに経験済みなのだ。そして杉咲にはこの頃から、はっきりとした物言いで竹を割ったような性格のキャラクターが実によく似合っていた。

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