『恋あた』を魅力的にしたのは“悪者がいない世界” 実らなかった恋も美しい恋愛ドラマに

『恋あた』を魅力的にしたのは“悪者がいない世界” 実らなかった恋も美しい恋愛ドラマに

 クリスマス直前に最終回を迎え、一足早く我々にホワイトクリスマスを味わわせてくれた『この恋あたためますか』(TBS系、以後『恋あた』)。

 この作品、従来の恋愛ドラマの定説を覆した点がいくつか挙げられる。まず、あまりに長いヒロインの片想い期間だ。最終的には無事ヒロインの樹木(森七菜)とコンビニ元社長の浅羽(中村倫也)が一緒にクリスマスイヴを過ごすハッピーエンドを見せてくれたワケだが、彼らの関係の変遷が面白い。樹木とともにコンビニスーツ開発に取り組む新谷(仲野太賀)、商品部スイーツ課のリーダーの里保(石橋静河)も含めた四角関係がガラリと様相を変えるのが全10話のうち後半も後半、第7話だ。しかも樹木は浅羽にその前にしっかりハッキリと振られている。

 そして、本作には「悪者」が1人たりと出てこないのだ。四角関係ともなれば、誰かがもう片方の恋心を邪魔するために牽制したり、嘘をついたりして、誤解が誤解を呼んでこじれるのがお決まりの展開だと思うが、本作で「すれ違い」が起こるのは誰かの意地悪や悪意によってではなく、端的に言えば浅羽が自分の本心に気づくのに時間がかかってしまったがため、ただそれだけだった。それに気づかせてくれたのもあろうことか恋人の里保だという新しい展開。

 「拓実は樹木ちゃんが好きだよ」、自分がずっと想いを寄せてきて一度別れてまた恋人関係に戻れた浅羽に対して里保が言うのだ。見て見ぬ振りできたかもしれない違和感や、気付きたくなくても気付いてしまう相手の視線の中に映る者の変化から目を逸さずに、自分から別れを切り出す。里保のあまりに健気で立派すぎる英断に思わず心の中で拍手喝采を送りたくなった視聴者も少なくなかったはずだ。全員が素敵なキャラクターたちだからこそ、皆の幸せを願わずにはいられない。だからこそどうしたって破れる恋心があることがわかっている我々視聴者の胸には毎話切なさがしんしんと降る雪のように積もっていくのだ。

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