年末企画:今祥枝の「2020年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 異文化を知ることの重要性を再確認

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、海外ドラマの場合は、2020年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第15回の選者は映画・海外ドラマライターの今祥枝。(編集部)

1. 『HOMELAND/ホームランド』シーズン8(FOXチャンネル)
2. 『Mr. ROBOT/ミスター・ロボット』シーズン4(Amazonプライムビデオ)
3. 『フォッシー&ヴァードン ~ブロードウェイに輝く生涯~』(WOWOW)
4. 『カリフェイト』(Netflix)
5. 『DEUCE 3/ポルノストリート in NY』(スターチャンネル )
6. 『ラミー 自分探しの旅』 シーズン1&2(STARZPLAY)
7. 『ふつうの人々』(STARZPLAY)
8. 『プロット・アゲンスト・アメリカ』(スターチャンネル)
9. 『クイーンズ・ギャンビット』(Netflix)
10. 『ウォッチメン』(スターチャンネル)
次点:『ダーク』シーズン3、『ベター・コール・ソウル』シーズン5、『ザ・クラウン』シーズン4、『POSE』シーズン2、『リトル・ファイアー』

 2020年は誰にとっても困難な年だったと思うのですが、個人的にも家の事情によりカオスな1年でした。なので例年に比べて視聴に計画性もなく記憶が飛んでいる作品もありつつ、自分用メモを見直しながら初見時の盛り上がり度を思い出して10本選びました。

『DEUCE 2/ポルノストリート in NY』(c)2019 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

 振り返ってみると、個人的にはご贔屓のシリーズものの最終章に感心しきりの1年だった。『Mr. ROBOT』、『DEUCE』、『ダーク』、『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア~制御不能な夢と野心~』(旧作だけど最終章上陸は今年。テン年代の埋もれた秀作だと思う)などの最終シーズンは、それまで積み重ねてきたエピソードを回収しながら、よくぞこんな着地点を……と思わせてくれる作り手たちの手腕と作品への愛にしびれた。どっぷりとその世界に浸ってキャラクターとの旅ができるのはTVシリーズの醍醐味だと思う。もちろん長く続ければいいというものでもないし、TVの黄金時代にはキリのいいところで終わる作品に秀作が多いですけども。

 というわけで超私的ベスト1は、シーズン1から思い入れ度MAXの『HOMELAND/ホームランド』。シーズン5ぐらいから、最終章はどう決着をつけるのかを毎シーズン考えながら観ていたが、予想もしなかった最終話の完璧さに胸が躍るやらお別れが寂しいやらで文字通り泣き笑い。キャリーとソールの物語が、こんな結末を迎えるとは……と感無量だった。最終章でハワード・ゴードン、アレックス・ガンザ、ギデオン・ラフが自ら監督や脚本を手がけるというあたりも胸熱ポイント。最後まで丁寧に、ファンなら満足できるというレベルを遥かに超えた幕引きに、ありがとうホームランド! という気持ちでいっぱいに。その後の現実世界の中東情勢とのリンクにもぞわぞわした。

 本作はイスラエルのシリーズ『プリズナーズ・オブ・ウォー』のリメイクだが、オリジナルとは別物として成功させるハリウッドはさすがだなあと改めて思う一作でもある。一方で、2019年ベスト10にも書いたと思うが(参照:年末企画:今祥枝の「2019年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 キーワードは“内省”と“再認識”)、今年も非英語圏の作品を意識して観た。ここが攻めきれなかったところでもあるのだが、特に米リメイクの多いイスラエル、トルコ、台湾が今年個人的に興味を持った国。イスラエルの『テヘラン』はともかく『ファウダ -報復の連鎖-』の泥くささにドン引きしたり、韓国ドラマに通じるのではと思ったトルコの『恋の入門編』、『次の被害者』を観てすげえ! となった台湾などなど、見慣れぬ日常描写にへえ~と思ったり。気分転換にも最適だった。

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