2020年の年間ベスト企画
年末企画:今祥枝の「2020年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 異文化を知ることの重要性を再確認
関連して、社会派として非常に優れた北欧『カリフェイト』、『ラミー 自分探しの旅』なども異文化を知ること、目を向けることの重要性や興味は尽きないと思わされた秀作。前者も後者も、今のアメリカが世界からどう見られているのかがよくわかる描写が多い点も非常に面白く観た。
大統領選を追いかけながら、アメリカなあ、と思った1年でもある。『ウォッチメン』『ラヴクラフトカントリー』『ハリウッド』ほかあの手この手で歴史の再認識を促す作品も多かったように思う。中でも民主主義とは?を問いかける『プロット・アゲンスト・アメリカ』のメッセージはずしりと重く受け止めた。スターチャンネル座談会(参照:『キング・オブ・メディア』と『ウォッチメン』は裏表の存在? 識者が語り合う2020年の海外ドラマ【前編】)でも話に出たが『DEUCE』も手がけた本作のクリエイター陣の視点、作風は超好み。
『フォッシー&ヴァードン』は海外ミュージカル愛好家としてはたまらないものがあるが、これも去年のベスト10でも書いたが、どこまで行ってもグレーゾーンな問題を掘り下げていく作品は基本好み。夫婦、男女、アーティスト同士の関係性や複雑さを浮き彫りにする本作のテーマは痛々しくもあるが非常に今日的。特にフォッシーの栄光にかき消されたグウェン・ヴァードンが果たしたクリエイティブな役割を描きつつ、ヴァードンもフォッシーも被害者であり加害者と言える側面もあるといった難しいところに作り手が果敢に踏み込んでいるのがいい。性急に結論を求めがちだが、答えが出ない問題を考え続けることもまた大事なのだと改めて思う。
女性の描写に関連してシスターフッドといった言葉をよく耳にするようになった。でもなんとなくその辺にまとめておけばOKみたいな雰囲気はむしろ嫌だなあとも。『ザ・クラウン』はくだんの三角関係云々以上に、男性社会で成功した女性が陥りがちな女性を差別する側としてのサッチャーの描写に膝を打った。決して相容れない女性同士を描いた『リトル・ファイアー~彼女たちの秘密~』なども、昨年の『ザ・モーニングショー』にも通じるが、この矛盾した女性像にこそ社会や組織の構造的問題点に目を向けることを促す要素があるだろう。そういう意味では今年の私のNo.1は超保守派女性活動家とフェミニストたちを描いた『Mrs. America/ミセス・アメリカ』(WOWOWで2021年放送)だったかなと思う。双方ともに矛盾だらけの言動に耳が痛いものもあり、そりゃ分断も起こるよなあとも。つくづく女性とは、人間とは複雑な生き物なのだ。
■今祥枝
ライター・編集者 『日経エンタテインメント!』『シネマトゥデイ』『小説すばる』『BAILA』『yom yom』などで映画・海外ドラマについて執筆。Twitter:@SachieIma
■リリース情報
『HOMELAND/ホームランド ファイナル・シーズン 』
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