林遣都一人芝居の新しさ、男女ともに好感『わたナギ』 2020年を振り返るドラマ座談会

林遣都ドラマの新しさ【2020ドラマ座談会】

『世界は3で出来ている』の1人芝居×3という新しさ

ーーSYOさんの今年よかったドラマはなんでした?

SYO:単発ドラマだと林遣都さんが一人三役を演じた『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)です。クオリティの高い役者を入れれば、一人でこれくらいのことができるんだなと驚かされました。コロナ禍で自分が懇意にしてたお店が潰れてしまうとか、リアルタイムな悲しみをちゃんと描いてくれたので、救われた人もすごく多かったんじゃないかなと思います。今年のこの状態でしか作れないドラマだったと思うし、とてもクオリティが高かった。

Numoto:林遣都さんはぐんぐん頭角を現してきた感じがありますよね。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)でより人気が出て、『スカーレット』(NHK総合)に出演して、リモートドラマでも活躍して、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)も出演して、映画も決まっていて。役者として飛躍の年だったことに加えて、この時期にチャンスを掴んだことがすごいなって思いました。誰もが仕事が減っていた時期に、林遣都さんはすごく活躍の場を増やしましたよね。

佐藤:リモートドラマも含め、自粛中はいくつか実験的な作品がありましたよね。

SYO:『世界は3で出来ている』の物語自体は、「自粛が明けてから、ただ三つ子が出会った」それだけの話ですが、一人芝居×3という部分に新しさがある。何がすごいって、林遣都さんの見た目が変わらないのに3人が別人に見える。同じ空間にいて、同一人物なのにも関わらず、それを成立させてしまうところが凄かった。3人で声を合わせるシーンとか、どうやって撮影したんだろうと思いました。

Numoto:リモートだと『JOKE~2022パニック配信!』(NHK総合)が好きでした。美術の可愛さとか華やかさがありつつ、一人芝居も面白かった。リモートだと、SNSとかインターネットを絡ませざるを得なくなるじゃないですか。相手がいない状態で物語を進めるとなると、どうしてもガジェットありきになる。それもあって、私たちが普段使っているスマホやSNSが、さらに色こく反映されるきっかけになったのかなとは思いました。そこにすごい面白さを感じましたね。あるあるって思ったり、いいことばかりじゃなくて怖い部分もあると思ったり。それをリアルに感じた作品でした。

SYO:『JOKE~2022パニック配信!』は、ネットの悪意をすごく上手に描いていましたね。今年はいろんなSNS上の問題があったし、誹謗中傷もその一つだと思います。やっぱりコロナ以降からSNS上での悪意ってだいぶ増していると思っていて。SNSがみなさんのストレスの吐け口になってる中で、ドラマも変わってきてるなと思います。

ーー佐藤さんは何かリモートドラマご覧になりました?

佐藤:リモート中は完全にNetflix中毒になっていました。『梨泰院クラス』、『愛の不時着』、『人間レッスン』など、気分だけでも韓国に行きたいって思っていましたね。逆にいうと、一気観ができる時間が取れるので、没頭しやすい時期でした。あと、自粛期間中に連絡をとった人とは「何観てる?」なんて会話もしました。「見たらリモート飲みしようよ」って言い合ったり。

ーーそうですよね、リアルタイムで観て喋れる作品がないから、同じ作品を観て話したり。

佐藤:あとは自粛中に入った動画配信サービスで、過去に評判がよかった作品を観たりもしました。再放送している内容を観て、その人の過去の作品を観たいと掘り返してみたり。ドラマって時代をすぐ取り入れられる代わりに、すぐ捨てられる作品でもあるじゃないですか。観返すっていう、立ち止まるタイミングにもなったかなと思いました。『最高の離婚』(フジテレビ系)を観返した時は、離婚に対する価値観も、この数年でまた変わってきているなと改めて感じました。きっとこの先、2020年を経ていろいろな価値観がもっと休息に変化していく気がします。「テレビで今これ流すのはいかがなものか……」ってなってしまう名作が再放送されにくい時代にもなっていくと思うので。個々人がオススメし合って好きなタイミングで観返す習慣みたいなものは大切にしていきたいなと。

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