楠見薫は9作目、井上拓哉は5作目 『おちょやん』を支える大阪朝ドラ常連俳優たち

『おちょやん』を支える大阪朝ドラ常連俳優

 回を追うごとに登場人物それぞれの人間味が増して、面白さが加速する『おちょやん』(NHK総合)。第3週は、ヒロインの千代(杉咲花)が奉公する芝居茶屋「岡安」の女将シズ(篠原涼子)と歌舞伎役者の早川延四郎(片岡松十郎)の密通の噂が道頓堀中に広まるという騒ぎが巻き起こった。

 千代たちお茶子が動揺し、あれこれ心配するのを見たシズは正直に延四郎とのことをみんなに打ち明ける。確かに恋仲になりかけたが、それはシズが岡安を継ぐためにお茶子修業をしていた20年前のこと。何もかも捨てて東京へと駆け落ちしようとしたことがあったが、当時の女将でシズの母であるハナ(宮田圭子)が引き留めた。仕事に厳しく、「岡安」ののれんを守ることを第一に考えているシズの切ない昔の恋の話なのだが、偶然シズと延四郎が再会していたところを「岡安」のライバルである老舗の芝居茶屋「福富」のお茶子に見られてしまったため大きな騒動になってしまったのだ。

 第13話では、「岡安」の台所で女中頭のかめ(楠見薫)のもとに千代やお茶子が集合。奉公人の中でも一番の情報通で、シズと延四郎の駆け落ち話にも詳しいかめを中心に話が盛り上がった。普段は座布団やお弁当を運んで忙しそうなのだが、「岡安」のお茶子は何か騒動があると一致団結して仲の良さを発揮している。

 かめを演じる楠見薫は朝ドラ常連女優の異名を取るほど、朝ドラの出演が多く、1996年放送の『ふたりっ子』から2019年放送の『スカーレット』まで8作に出演しており、『おちょやん』が9作目の朝ドラ出演となる。

 千代が9歳で初めて「岡安」にやってきたとき、大きく目を開き、一瞬だけ意地悪そうな値踏みするような表情を見せたが、千代との関係に変化が起こるたびに顔つきまで変わって、今ではすっかり打ち解けた雰囲気になっている。シズと延四郎の話をお茶子たちとしているときも、「かめ壺」と呼ばれる内緒のおやつ入れにおかきらしきものをたくさん用意しているチャーミングな姿も。女中あるあるというより、どこの職場にもいる親しみやすいキャラクターとなっている。

 お茶子たちが噂話で集まっているところにシズが登場して慌ててお皿を割ってしまい、新入りで女中見習いの里子(奥野此美)がシズに怒られそうになったところを「すんまへん」と、かめが初々しい表情で上目遣いに謝ったのもかわいらしく、おかしかった。

 実の家族と縁がなく、子供の頃から厳しい試練が降りかかる千代を取り巻く様々な人の中でも、かめは人一倍人情を感じさせ、千代と笑いや涙を共にして物語を盛り上げている。朝ドラ常連女優の実力が思う存分発揮される作品として、ますます期待がふくらむ。

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