奈緒の感情表現はダイレクトに心に響く 『姉ちゃんの恋人』で見せる新たな魅力
現在放送中の火9ドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)で、有村架純演じる主人公の幼なじみ役を好演中の奈緒。飾らない友情を体現する一方で、高橋海人演じる年下男子との恋愛に戸惑う姿を愛らしく演じている。
奈緒は、野島伸司氏が総合監修を務めるポーラスター東京アカデミー出身。筆者が初めて彼女の演技を見たのは、まさにその野島氏脚本によるHuluオリジナルドラマ『雨が降ると君は優しい』(2017年)だった。
演じていたのは、古谷一行演じる老作家を担当する新人編集者役。スーツにメガネという決して目立つビジュアルの役どころではなかったが、強烈なセクハラに耐えながら生きる姿に「なんて切ない気持ちにさせる女優さんだろう」と強く惹きつけられたのを覚えている。
翌2018年、NHK朝ドラ『半分、青い。』でヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の親友役を演じて注目を集め、2019年に『あなたの番です』(日本テレビ系)で演じたストーカー“尾野ちゃん”役でブレイク。2020年には『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』『僕の好きな女の子』『事故物件 恐い間取り』『みをつくし料理帖』など、実に6本もの映画が公開となった。
役者として飛躍を続ける彼女が、現在『姉ちゃんの恋人』で演じているのは、主人公・桃子の親友・浜野みゆき役。前クールの『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)では、無表情でクールな天才ハッカーに扮していたが、今作では表情豊かな愛らしいキャラクターを演じ、新たな魅力を見せている。
幼い頃から可愛がってきた桃子の弟・和輝(高橋海人)から突然の告白を受け、驚きながらも交際を前提とした“仲良し”をスタートさせたみゆき。第3話で、頬についたクリームを指で拭い、ペロッと舐める和輝に見せた驚きの表情は、みゆきの当惑と胸キュンがまるごと伝わってくるようだった。
一方で、本作の名物シーンと言えるのが、桃子とみゆきがコンビニ前で繰り広げる親友同士の女子トーク。出勤時の地味なスーツ姿とはガラッと異なるカラフルなファッションに身を包み、桃子と本音を語らう声のトーンやテンポが心地良い。
ここ数話の同シーンでは、親友の悩みに耳を傾けるその裏で、和輝の姉でもある桃子に、なかなか和輝との関係を言い出せないみゆきの姿が描かれた。第7話で意を決して事実を打ち明ける際には、相手の機嫌をうかがう話し口と上目遣い、また桃子に否定する隙を与えない早口が絶妙で、明るい未来を祈るみゆきの気持ちが手に取るようにわかった。