15周年を直近に控え新作アニメシリーズも発表 『コードギアス』はなぜファンを魅了し続ける?

 そして同時に、本作では主な対抗手段がテロリズムというのも時代を反映している。ルルーシュは謎の仮面の男であるゼロとなり、ブリタニアと戦う多くのレジスタンスをまとめ上げる。話が進むにつれて組織として大きくなり、国家規模になるものの、当初は単なるレジスタンスにすぎず、その手段は主にテロリズムだ。テロの脅威は現代にも続く大きなテーマだが、それを物語に組み込んだことも、ヒットの要因になるのではないだろうか。

 そのライバルとなる枢木スザクの考え方にも注目したい。ブリタニアと日本の開戦当時の首相を父に持つスザクは、ブリタニアの兵士となる選択をする。そこから卓越した身体能力とナイトメアの操縦技術により騎士として名を上げていく。組織の中に入り、内側から組織や社会を変えていくことを選択するのだ。皇帝の息子のルルーシュが帝国を倒す敵となり、かつて帝国と立ち向かった首相の息子が帝国を守るという立場の違いも面白い。

 その他にも主要キャラクターの紅月カレンは、ブリタニア人と日本人のハーフであり、自分の居場所がないという感覚を抱いている。また初期の敵キャラクターであるジェレミアやヴィレッタは純血派という派閥を立ち上げており、これは騎士など社会的地位のある役職は、純潔のブリタニア人がなるべきである、という考え方だ。これは多様性の問題の1つであり、2006年の時点で先進的な発想で、挑戦的なテーマを提示している。

 大切な物を守るために、戦うしかできない者。居場所が欲しくて戦う者。組織の中から変革を志す者。組織に入れない者。全ての決着が着く2期である『コードギアス 反逆のルルーシュR2』の最終話の問答は、社会の複雑さを感じさせられた。ルルーシュ・ランペルージュの物語はピカレスクロマンとして幕を閉じ、その後はOVAシリーズや漫画作品、そして映画3部作と『コードギアス 復活のルルーシュ』へと繋がっていく。

 『コードギアス』らしさとは何か?

 人によってはルルーシュの存在だろうし、ギアスと呼ばれる特殊能力、ナイトメアの戦い、複雑な人間や社会への問答だと答える人もいるだろう。そしてそれは谷口監督やシリーズ構成の大河内一楼の手を離れて、スマホゲームと新しいアニメシリーズが生まれることで変化するのかもしれない。しかし、それで幅が狭くなるということはないはずだ。平成最大のオリジナルロボットアニメが令和にどのような変化を見せるのか、注目したい。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。平成アニメの歴史を扱った書籍『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』(KADOKAWA刊)が発売中。@monogatarukame

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