井川遥、『おちょやん』で千代を導く存在に? 過去の朝ドラ出演で見せた様々な姿

井川遥、『おちょやん』で千代を導く存在に?

 『おちょやん』(NHK総合)第2週目「道頓堀、ええとこや〜」で、道頓堀の芝居茶屋「岡安」に奉公に出された主人公の竹井千代(毎田暖乃)は、初めて演劇の世界に触れる。そこで出会った上方演劇界のスター女優として登場するのが、井川遥演じる高城百合子だ。少しの登場シーンでも、その堂々とした振る舞い、優雅で気高き姿に往年の大女優の風格を漂わせていた。舞台上の彼女の芝居に千代も一気に引き込まれ、以来千代にとっての憧れの女優となるのだった。

 井川にとって本作は朝ドラ出演3作目となる。まず1作目の『純情きらり』(2006年)での主人公の姉であり一番の味方である心優しき“杏姉ちゃん”役は、井川自身が持つたおやかさや包容力がそっくりそのまま生かされた役どころだった。2作目の『半分、青い。』(2018年)では、全く違う顔を見せ、彼女のこれまでのイメージとはかけ離れたキャラクターを演じてのけた。少女漫画家のマネジメントを担当する“ひしもっちゃん”こと菱本若菜として、40代ながら「ピンクハウス」のガーリーな衣装を見事に着こなす姿が印象的だった。冷静沈着で淡々とした話し口調、怒ると理路整然と超早口になるような頭の回転が速くかなりユニークな役どころを見事演じ切った。ここまで濃いキャラクターを演じるのは彼女にとって珍しいことではないだろうか。彼女が演じることで、どんな女性キャラクターにも秘められている“愛すべき部分”が丁寧に表現されるのが毎度お見事である。

 『半沢直樹』での小料理屋の女将・智美役では、美しい着物姿とそれに合ったしっぽりとした佇まいが話題になった。企業戦士らの熾烈な争いが繰り広げられるストーリーに束の間の“安息の地”をもたらしてくれるようなポジションを体現していた。いつも半沢(堺雅人)と同僚らの愚痴に優しく付き合ってくれていたかと思いきや、やけに銀行の内部事情に詳しく、後半戦には中野渡謙頭取(北大路欣也)の元部下であることがわかってくる、実際には“敵か味方か味方かわからない”謎めいた存在だという重層的な役どころでもあった。“控えめ”でありながら、強く後まで尾を引く印象を残し続けられるのも井川の魅力の一つだろう。彼女には過剰であることが全くない。“引き算の美学”こそ大人ゆえの余裕と経験値があって初めて手を出せるものだろう。

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