『おちょやん』千代と“腐れ縁”一平が出会う 中須翔真は『スカーレット』以来の朝ドラ出演
「岡安」のお茶子になった千代(毎田暖乃)。『おちょやん』(NHK総合)第7話は、芝居茶屋をめぐる人間関係を描く。そこには運命の出会いもあった。
お茶子の仕事は忙しい。女中頭のかめ(楠見薫)に言いつけられたのは、掃除、洗濯、花瓶の水替え、火鉢の番など家の中だけでも目が回りそうなのに、お使いで何軒も訪ねて、帰ってくれば、富士子(土居志央梨)から座布団のほつれを繕うように言われる。風呂にも入れず、仕方なく道端の天水桶で髪を洗う。濡れそぼった髪を拭きながら見る道頓堀は、人でにぎわう別天地だった。
衣食住をあてがわれて働くお茶子は給金なしで、客からもらうチップが唯一の現金収入。華やかな芸事の世界には光と影があって、最初に千代が身を置いたのは「影」の部分。そのことは千代の今後にも影響を及ぼしそうだ。
第7話では同世代との邂逅も。岡安の一人娘みつえ(岸田結光)やライバル店「福富」の福助(松本和真)、天海天海(茂山宗彦)の息子・一平(中須翔真)だ。「うちとあんたは住む世界が違う」とみつえが言うように、千代と彼らの間には目にしている以上に大きな格差がある。その差は、たとえるなら河童と人間の違いくらい大きい。
福富に行った千代は、菊(いしのようこ)に包みを突き返され、夜まで粘るが、使いを果たせずに帰宅。シズ(篠原涼子)に叱責されてしまう。実は、本家に義理立てした形だけの挨拶だった。「菊さんの剣幕で断られたら、すぐ戻ってくる思いましたさかい。ほんまあほや」とかめがけなすのを、シズは何も言わずに聞く。シズは、他のお茶子にないものを千代の中に感じ取ったのかもしれない。
福富の女将・菊を演じるのは、いしのようこ。いしのは『べっぴんさん』(NHK総合)以来、4度目の朝ドラ出演。髪を結った和装のいしのを見ると『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)を思い出す。笑いあり涙ありの『おちょやん』で、どんな芝居を見せてくれるか楽しみだ。
また、のちに千代と「腐れ縁」の関係になる天海一平の少年時代を中須翔真が演じている。中須は『スカーレット』(NHK総合)に川原喜美子(戸田恵梨香)の息子・武志役で出演しており、前年に続いての登場。重要な役どころで、ひと回り成長した姿を披露した。
店先で会った一平は、千代を見るなり「なんや。ゆんべの河童か」と言い放つ。河童を見つけたと思ったら人間の千代で、芝居茶屋に来たら昨日の河童がいる。一平にとって、千代はそれまでに見たことのない生き物。一平が千代に向ける目線は、単なる好奇心とも上下関係とも異なるもので、あえて言うなら、虚実をありのままに見る役者の目だ。一方で、千代にとって一平は初めて間近で見る役者。一平との出会いは、千代をどんな風に変えていくだろうか?
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/