杉咲花の演技力が感じさせた、描かれていない8年間 『おちょやん』で見えた千代の原点

杉咲花の演技力が感じさせた、描かれていない8年間 『おちょやん』で見えた千代の原点

 岡安に来て約8年。18歳になった千代(杉咲花)は、生まれて初めて自分のやりたいことを考えることになった。NHKの連続テレビ小説『おちょやん』が第3週初日を迎え、千代がお茶子としてイキイキと働く姿と芝居の魅力にとりつかれた姿が魅力的な回となった。

 物語冒頭、千代は座布団を運ぶために道頓堀を「ごめんやっしゃ! ごめんやっしゃ!」と駆けていく。道頓堀の人々が「おはようさん」「今日も精が出るな」と声をかけていくあたり、千代の働きぶりは広く知られているのだろう。“口が達者で機転がきく”千代らしいシーンは観ていてとても楽しい。小次郎(蟷螂襲)から「今日はまた一段とかわいらしなあ」と言われるとパッと「朝からそないほんまなこと言わんといて」と笑顔で返し、福富のお茶子たちに嫌味を言われたときには、福富のお客さんの少なさに「楽でよろしなぁ、羨ましいこと」と返す。これらのやりとりはとても小気味よく、この先、喜劇女優として人々に愛される彼女の原点が見えた。

 芝居に熱中する千代の熱い視線もまた魅力的だ。この8年ですっかり芝居好きになった千代は仕事の合間に舞台をのぞき見する。役者の演技に目を凝らす千代の表情は、小次郎や福富のお茶子達とのやりとりで見せていたそれとは全く異なるものだった。千代が熊田(西川忠志)に注意されるまで身動き一つせず、力強い視線で、芝居を見続けていたようだ。千代の無類の芝居好きは周知されているようで、熊田はのぞき見をたしなめつつ「どやった? 今日の芝居は」と聞く。千代と熊田が早川延四郎(片岡松十郎)の鬼気迫る演技について語り合う姿から、千代の観察眼が優れていることがわかる。このことは、将来、女優の道へ飛び込む千代の強みになっていくのかもしれない。

 杉咲の演技は、描かれていない千代の8年間までも感じさせる。里子(奥野此美)がかめ(楠見薫)に叱られたとき、落ち込みながらも仕事に励む里子を千代は優しく見つめていた。かつての自分と同じ年頃の里子を見るその目は、叱られながらも仕事を覚え、おちょやんからお茶子へと成長した自分を振り返っているように見えた。ほんの数秒のシーンからも千代の人物像がはっきりと浮かび上がる、そんな杉咲の演技力に驚かされる回でもあった。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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