悲劇と希望が織りなす“人生”を巡る旅 “画力”に引き込まれる『ホモ・サピエンスの涙』

『ホモ・サピエンスの涙』で“人生”を知る

 作品に込められたメッセージはもちろん、ロイ・アンダーソン作品の魅力はその“画力”にある。自身が所有する制作スタジオ「Studio 24」に組まれた巨大セットに、ミニチュアの建物やマットペイントを使用しながら表現された独自の世界。そしてフィックスしたカメラが映し出す人々の細かな動きや表情。たとえ登場人物たちの哲学的な会話が難しくて理解できずとも、この“画力”だけで確実に引き込まれる力がロイ・アンダーソン作品にはある。

 それほどの“画力”を持つロイ・アンダーソン監督。演出も細かいのだろうなと思っていたところ、本人からは「『ここに立ってください』と指示することはありますが、それ以上のことは言いません。『ここに立って、こう動いてほしい』というお願いはしますが、それ以上ではないんです」と意外な回答。なるほど、出演者も監督の意図をはっきりわかった上で撮影に参加しているのだろう。リアルサウンド映画部では前述の内容を含め、ロイ・アンダーソン監督にオンラインインタビューを行ったので、ぜひそちらもチェックしていただきたい(参考:ロイ・アンダーソン監督が『ホモ・サピエンスの涙』で伝えたかったこと 独自の制作活動に迫る)。

 奇しくもコロナ禍を彷彿とさせるような世界が描かれた『ホモ・サピエンスの涙』。いままさに映画館で観る価値のある一作だ。

■公開情報
『ホモ・サピエンスの涙』
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館にて公開中
監督・脚本:ロイ・アンダーソン
出演:マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストルム
撮影:ゲルゲイ・パロス
配給:ビターズ・エンド
後援:スウェーデン大使館
2019年/スウェーデン=ドイツ=ノルウェー/カラー/76分/ビスタ/英題:About Endlessness
(c)Studio 24

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