『エール』変わり果てた久志に絶句 津田健次郎が闇市の博徒役でカメオ出演
あの人は今、どこで何をしているのだろうか?
「長崎の鐘」を世に送り出し、自身の中の戦争にひと区切りをつけた裕一(窪田正孝)。鉄男(中村蒼)も「港の恋唄」をヒットさせるなど、作詞家としてキャリアを再開していた。ある日、コロンブスレコードにいる2人を藤丸(井上希美)が訪ねてくる。
『エール』(NHK総合)第97話は、旧友との再会を描く。藤丸に連れてこられたのは路地裏のバラック小屋。そこにいたのは福島三羽ガラスの伊達男、久志(山崎育三郎)だった。ぼさぼさの髪に無精ひげを生やし、酒焼けした顔は垢で黒ずんでいる。戦時中「露営の歌」、「暁に祈る」をヒットさせた人気歌手の面影はそこにはなかった。
変わり果てた久志を前にして、裕一と鉄男は言葉に詰まる。「いつからここにいるの?」。裕一の問いに久志は答えない。藤丸によると、久志の実家は農地改革で土地と屋敷を失い没落。こういったエピソードは当時多くあった。父親が亡くなってからは歌もやめてしまい、東京で「酒と博打でどうしようもない暮らし」を送ってきたと話す。
藤丸の久志に寄せる純情に胸が熱くなる。かつて親密な空気を漂わせていた2人。闇市での再会以降、藤丸は久志の面倒を見てきたが「私一人じゃ、もうどうにもできなくて」と裕一を頼ってきたのだった。下駄屋の娘である藤丸とプレイボーイ久志の物語は、戦争が終わった後も続いていた。
久志の麻雀仲間・犬井を演じるのは『エール』の語りでおなじみの津田健次郎だ。声優であり、アニメ『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』シリーズ(テレビ東京系)の海馬役で知られ、2021年に全世界配信されるアニメ『極主夫道』(Netflix)の主人公・龍役も決定している津田。『エール』の低音担当としてイケメンボイスを響かせる津田だが、ここでは闇市の博徒役で登場。大三元を揃えた久志に「地獄だな」「勝ちっぱなしじゃねえか」と噛みついたかと思えば、「何だこら?」「帰れこら」と裕一を睨みつける。狂犬さながらのやさぐれ感と色気を全身から発散していた。
朝ドラの主演または主人公の家族以外で、ナレーション役の俳優がカメオ出演する例はこれまでにもある。歴史をさかのぼると、『はね駒』(NHK総合)で細川俊之が通行人役で出演したほか、最近では『ひよっこ』(NHK総合)の増田明美が、みね子(有村架純)が通う高校の体育教師・木脇先生役で登場。元オリンピアンらしい颯爽とした走りを披露した。毎日聞いてよく知っている声の主と画面上で“再会”する。こんな遊び心ならいつでも歓迎だ。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/