声優・津田健次郎が語る、これまでの表現とは異なる『エール』語りの面白さ 「重要なのは緩急」

津田健次郎が『エール』語りに込める“緩急”

 月曜日から土曜日まで(土曜日は1週間の振り返り)放送されている連続テレビ小説『エール』(NHK総合)。朝ドラ史上最も重苦しかったと名高い戦争週、そして「長崎の鐘」の制作を経て、裕一(窪田正孝)は自責の念から立ち上がり、作曲活動にまい進している。

 『エール』の語りを務めるのは、津田健次郎。20〜30代の方には『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』の海馬瀬人役でおなじみの声優だ。津田は、1995年にテレビアニメ『H2』で声優デビューを果たすと、アニメや洋画の吹き替え、ナレーション、ラジオパーソナリティーとして活動。近年は役者業以外にも映像監督、舞台演出なども手掛けている。

 今回、リアルサウンド映画部では、津田にインタビューを行い、朝ドラ参加への思い、そして第97話では実際には出演も果たしたことについて、撮影の裏話を含め語ってもらった。

声優・津田健次郎が語りに抜擢された理由とは

津田健次郎

ーー朝ドラの語りを担当して、反響はどうですか?

津田健次郎(以下、津田):僕の周りにいる人たちからもダイレクトに反響をいただけますし、SNS上やインターネット上でもリアクションがかなり大きくて、めちゃくちゃ嬉しいです。

ーー声優としてのお芝居ともナレーションとも異なる朝ドラの語りですが、ここまで担当していかがでしょう?

津田:僕はこれまで演技的な表現をベースでやってきたこともあり、今回演技ともナレーションともまた違う、独自の世界観と言いますか、表現の面白さを感じています。収録がいつも楽しみで、「裕一と音の心情にどのように寄り添おうか」と、スタッフさん、演出のみなさんと作らせていただいている感じがすごくあり、自分の中にも豊かなものが得られて楽しいです。

ーー語りを入れる上でのテンションはどのように考えているのでしょうか?

津田:戦争に関しての事実を述べていくところは、やはりきっちりとしつつ、どこか重みを持たせないとドラマを壊してしまうのではないかと思って収録に臨みました。実際に当時のフィルムが使われているシーンでは、本当の映像の重みに負けてしまうんじゃないか。そういった不安はありましたし、その辺りのさじ加減やテンション、雰囲気、空気感は、演出の方とやりとりを重ねて、そのシーンにあった語りを探していきました。まず僕が映像を観て台本を読んで感じたものを最初に提案させていただいて、それに対してジャッジしていただき、修正をかけていくみたいな流れでやっています。

ーー『なつぞら』の語りの内村光良さんは、出演者とも会わず1人ブースでの作業とおっしゃっていました。津田さんは演出の方と一緒に作り上げている感覚なんですね。

津田:孤独感は全く感じていないです。確かに僕が1人でマイクに向かって、映像を観ながら収録をするんですけど、ガラスの向こうにはスタッフさんがいらっしゃって、トークバックや指示をいただけるので、本当に一緒に作っている感覚です。

ーー演出の方とのやりとりの中で生まれる面白さみたいなものも感じますか?

津田:まず演出の方のノリがめちゃくちゃ良いんです(笑)。第1話を観ていただくとわかるように、もちろん抑えるところは抑えるんですが、『エール』の演出チームはとても攻めたことをされます。僕も作品をより豊かにできる“遊び”に関しては、バンバン提案していきたいタイプなので、そういう意味ではノリがすごく合うと言いますか、かなりいろいろなニュアンスを作らせていただいています。それが、ナレーターやアナウンサーの方ではなく、僕を呼んでいただいた理由なのだろうなというのは、最初から感じていました。なので、とにかくお芝居でできること、ニュアンスの幅や遊びの部分をたくさん提供したいなと。

ーーたしかに、津田さんの語りは登場人物と視聴者の間の独特なポジションで、キャラクターとして立っている感覚があります。

津田:それでも重要なのは緩急だと思っていて、緩むところはとことん緩ませて、締めるところはきちんとできると理想的だなと考えながら、やらせていただいております。

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