吉岡秀隆、朝ドラ初登場で『エール』を一段と深い次元へ 裕一の心を変えるキーパーソンに

吉岡秀隆、朝ドラ初登場で『エール』を一段と深い次元へ 裕一の心を変えるキーパーソンに

 『エール』初登場となった第94話。吉岡演じる永田は病室兼書斎の如己堂で裕一(窪田正孝)を迎える。永田は白血病で床に伏せっているのだが、裕一がいる庭先との明暗の対比を含めて、忍び寄る死の気配を濃厚に感じさせた。ここでの吉岡は身体だけでなく表情の動きも最小限で、病にとらわれた永田の状態がダイレクトに伝わってくるものだった。

 圧巻だったのは裕一との会話。裕一は、戦場で散った若者たちのために「長崎の鐘」を作曲したいと話す。「贖罪ですか?」と尋ねる永田に「はい」と裕一は答える。その答えに永田は大きく息を吸って、ゆっくりと言葉を区切りながら「『長崎の鐘』をあなたご自身のために作ってほしくはなか」と語る。あくまで静かな、しかし断固としたその調子は、眼に宿る光の強さからわかった。

 永田は「神は本当にいるのですか?」と問う若者に「どん底まで落ちろ」と語ったことを裕一に伝える。わずかな目の動きと声のトーンで救済の厳しさを教え諭す吉岡の演技には、尋常ならざる緊張感がみなぎっていた。戦争に行った永田には裕一の苦しみがわかる。だからこそ、あえてでも曲の真実を伝えようとしているのだろう。医師である永田が、迷いの渦中にある裕一を渾身の力ですくい上げているように感じられた。

 迫真の演技は、ストーリーや登場人物のキャラクターを超えて、映像に込められた様々な文脈を掘り起こし、豊穣な小宇宙を立ち上げる。病床の永田を演じる吉岡と窪田の邂逅は『エール』を一段と深い次元に運んでいくだろう。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる