山中崇、物語に変化を加える味わい 智彦を変える(?)ラーメン屋店主として『エール』に登場
戦地での衝撃的な別れのシーンも含め、戦争の悲惨さを突きつけた『エール』(NHK総合)。第19週「鐘よ響け」では敗戦後の混乱と人々の心の揺らぎ、主人公の裕一(窪田正孝)をはじめ、登場人物それぞれが新しい道を模索する姿が描かれる。
目の前で恩師を失い、心に深い傷を負った裕一は曲が書けなくなってしまう。一方、軍人として戦争に参加していた吟(松井玲奈)の夫・智彦(奥野瑛太)は、復員したが就職先が見つからない。吟にも軍人の妻らしさを求めるほどストイックで、自分の職業に誇りを持っていた智彦だったが、その元軍人という経歴が邪魔をしてうまくいかないのだ。
そんな智彦が意外なことに闇市のラーメン店で働き始めることになる。その店主、天野弘役で登場するのが山中崇だ。最近では、堺雅人と共演したマクドナルドのCMが話題だ。1993年の新入社員時代から2020年の現在まで軽やかに年齢を重ね、理想的なサラリーマンを表現していた。CMなどでは爽やかな会社員役でスマートにスーツを着こなしていたりするが、無精髭をはやし、闇市でラーメンを作るその姿は一癖も二癖もありそうだ。お国のために真っ直ぐ生きてきた真面目な智彦とは対照的で、2人の間でどんなやりとりが展開され、智彦にどんな影響を与えるのか期待がふくらむ。
山中崇といえば、2013年放送の連続テレビ小説『ごちそうさん』(NHK総合)で演じた文士、室井幸斎役を思い浮かべる人も多いかもしれない。「百道樂シリーズ」の作者である作家の村井弦斎がモデルと思われ、食をテーマにした小説を書くことを口実に、ヒロインめ似子(杏)の実家の西洋料理店・開明軒に入り浸っていた室井。め似子の親友の桜子(前田亜紀)と駆け落ち、め似子の嫁ぎ先の大阪までやってくるなど破天荒なキャラクターであった。作家として成功したり、トラブルを引き起こしたり、鈍感なところがあるが憎めない、程よいさじ加減で物語にアクセントをつけていた。
山中は、舞台、ドラマ、映画と途切れることなく出演作が続く。2020年に公開の映画だけで『転がるビー玉』『燕 Yan』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『おらおらでひとりいぐも』『泣く子はいねぇが』と5本。2021年2月公開予定の『あのこは貴族』『あの頃。』も控えている。