『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が生み出すカタルシス “真っ白な人"の歩みを辿る
エンドロールが流れ終わった後も、動くことができないほどの衝撃だった。この作品は“神様からの贈り物”だ……その言葉しか、浮かんでこなかったほどだ。
『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が高い評価を獲得している。9月18日に公開され、興行収入ランキングでは2位を記録したほか、各種レビューサイトでは軒並み高評価が続いている。口コミでは「開始5分で泣いた」という評判もあり、多くのファンを魅了し続けている作品だ。今回は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』シリーズの魅力について迫っていきたい。
本作はKAエスマ文庫から発売されている暁佳奈のライトノベル作品を原作とした、京都アニメーション制作のTVアニメの劇場版作品だ。京都アニメーションが主催する京都アニメーション大賞にて評価された作品だが、大賞を受賞したのは過去10回を遡っても本作のみである。この賞はアニメ制作スタジオが主導しているということもあり、アニメ化の可能性が高いことが特徴として挙げられる。過去には『中二病でも恋がしたい!』『Free!』などがテレビアニメ化の後に劇場アニメ化を果たしている。
その流れを考えると、過去に1回しか出てこなかった大賞作品である『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がTVアニメ化を果たすのは当然ではあるのだが、今作への意気込みの高さは最初のCMの段階から伝わってきた。30秒前後と短いCMと、TVアニメや劇場アニメの単純比較はできないが、その精緻で美しく動き回る映像美に多くのファンが度肝を抜かれた。元々京都アニメーションは映像美が高く評価されており、日本を代表するアニメスタジオであるが、その本領発揮といったところだろうか。
2018年の1月にTVシリーズが放送されると、劇場アニメ作品に匹敵するほどの映像美だと、たちまち大きな話題を呼ぶ。初めは感情の機微が理解できない少女・ヴァイオレットが、手紙の代筆の仕事を経て、人が人に残したい思いを伝えていく姿を目の当たりにすることで、大きな人間的な成長を遂げていく。そして戦争が終わった後だからこそ、自分を救ってくれた愛する少佐を求めてしまうヴァイオレットの悲哀と苦悩、そして“アイシテル”を探す物語に、多くの人々が涙した。
特に大きな話題となったのは10話の『愛する人はずっと見守っている』だろう。病床の母親が幼い娘・アンを残してしまう苦悩と、病気の具合を知らずに母を求めるアンの思いをヴァイオレットが受け止めるシーンは名シーンとして名高い。YouTubeでも公開されている劇場版の冒頭シーンはこの感動的な話を基に制作されており、TVシリーズの感動を思い返して開始5分で涙する人も続出した。
2019年には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』が劇場公開された。こちらはヴァイオレットが中心となる物語ではないために外伝という扱いになるのだろうが、イザベラ・ヨークとテイラー・バートレットの姉妹を物語の中心に添えて、互いを思いやる姉妹の絆が、爽やかな涙を運んでくれる作品として好評を博した。