少年が旅路で出会った馬に訪れる悲劇とは 映画『異端の鳥』本編映像公開

映画『異端の鳥』本編映像公開

 10月9日より公開となる映画『異端の鳥』の本編映像が公開された。

 第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗いながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描いた本作。ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映されユニセフ賞を受賞したほか、第92回アカデミー賞のチェコ代表作品にも選ばれた。

 原作は、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した『ペインティッド・バード』。ポーランドでは発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げたいわくつきの作品を、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督が実に11年もの歳月をかけて映像化を果たした。

映画『異端の鳥』本編映像(ハンスの章)

 公開された本編映像は、疎開先の叔母が急死して以降、「家に帰る」という強い願いを胸に村から村へと渡り歩いてきた少年ペトル・コトラールが、森の中で足をケガした馬と出会う場面を捉えたもの。彼は弱った馬を勇気づけながらなんとか村までたどり着くが、村人たちは彼に不審に満ちた視線を向ける。そして、少年が助けようとして必死にここまで連れて来た馬は、足をケガしてもはや用無しの存在だった。馬の首に紐がかけられるのをじっと見つめる少年は、このシーンの次の瞬間、その理由を目の当たりにすることになる。

 このシーンをはじめ、少年が旅路の中で出会う様々な動物との関係について、マルホウル監督は「少年の魂の鏡となるのが動物との関係なのです」と語る。このシーンでの馬に対する優しさやこの後に訪れる悲劇に対する少年のリアクションだけでなく、大事にしていたフェレットを亡くし涙を流すなど、本作では、セリフが少ない少年の心の動きを分かりやすく表わすものとして動物との関係が度々効果的に使われている。しかし、少年は地獄の旅路を続ける中で次第に心を失い、動物への態度にも変化が現れるようになっていく。

 また、クランクイン当時わずか9歳だった新人・コトラールを演出するために活かしたのもまた動物との関わりだったという。コトラールには大事にしている愛犬がいるが、撮影現場に何度も連れてくることができない。そこで監督は、「ペトルはすごく感受性が鋭い子です。彼が会いたそうにしていた愛犬ドディッグのことを話すと1秒で想像して目に涙が溜まったりします。そうやってカメラに必要な感情を呼び起こしてもらっていたのです」と撮影の秘訣を明かした。

■公開情報
『異端の鳥』
10月9日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:ヴァーツラフ・マルホウル
原作:イェジー・コシンスキ『ペインティッド・バード』
出演:ペトル・コトラール、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアー
配給:トランスフォーマー
後援:チェコ共和国大使館
日本・チェコ交流100周年記念作品
2018年/チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作/スラヴィック・エスペラント語、ドイツ語ほか/169分/シネスコ/DCP/モノクロ/5.1ch/原題:The Painted Bird/字幕翻訳:岩辺いずみ/R15
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