Netflixの醍醐味がここにある トム・ホランドらの名演光る『悪魔はいつもそこに』でドン底気分に

Netflixの醍醐味がここにある トム・ホランドらの名演光る『悪魔はいつもそこに』でドン底気分に

 アメリカの田舎は地獄かよ。名は体を表すというが、時々、本当にタイトルのまんまだなと感心する作品がある。Netflixで配信が始まった『悪魔はいつもそこに』(2020年)は、まさにタイトルのまんまの映画だ。いやいや、悪魔的な人が出てき過ぎでしょうよ。

 物語は1950年代のアメリカから幕を開ける。太平洋戦争に参加したウィラード(ビル・スカルスガルド)は血まみれで磔にされたアメリカ兵を“楽にしてあげた”トラウマを抱えて、故郷の田舎町に舞い戻る。そこで妻と出会って子どもを授かるが、今度はその妻ががんになってしまう。ウィラードは手作りの十字架を前に、子供のアーヴィンをブン殴りながら神に妻の回復を祈る。しかし一向に病状は回復せず、つい遂にウィラードはアーヴィンの大好きな飼い犬を殺害して生贄に捧げるのだった。狂気のお祈りは、しかし実を結ばず、妻は死んだ。心の行き場を失ったウィラードは自殺し、1人残されたアーヴィンは祖母の家に引き取られるのだった。そして時は流れ、青年になったアーヴィン(トム・ホランド)は、義理の妹で熱心なキリスト教信者のレノラ(エリザ・スカンレン)らと、それなりに幸せな生活を送っていたのだが……そこに神の名のもとに女性を食い物にする最低牧師(ロバート・パティンソン)、殺人も行う汚職警官(セバスチャン・スタン)、被害者の死に顔の写真を集める猟奇殺人鬼カップル(ジェイソン・クラーク&ライリー・キーオ)が迫るのであった。

 最低牧師、汚職警官、猟奇殺人鬼と、石を投げれば悪魔に当たる映画である。まぁ現実もそういうものなのだけど、それを映画という形で観ることができるのは嬉しい。特にNetflixに自己肯定、犯罪、タコス、肉、ラリった人を求めている人間としては、Netflixの醍醐味がここにあると断言する。本当に酷い人間しか出てこない。『アンカット・ダイヤモンド』(2019年)もそうだったが、こういうドン底人生モノを安定して作ってくれるからNetflixを応援していきたい。

 そんなわけで濃厚なキャラクターによって作品の外堀は埋まっている。そして中身はというと……これまた期待通りの大満足。特に役者陣のアンサンブルが素晴らしい。スパイダーマン役で有名なトム・ホランドは、あどけなさの残る青年役だ。正義感が強く、作中で唯一の善人である。そんな彼の人生がメチャクチャになるのを見るのは、胸が痛むが素晴らしい。「トム・ホランドが酷い目に遭いまくる」というだけで映画的には勝っていると言えるだろう。世の中には劇中で酷い目に遭うほど輝く俳優がいるが(藤原竜也とかイ・ビョンホンとか)、トム・ホランドは間違いなくその系譜だ。本作で彼の被虐的な魅力は本格的に開花した。

 そしてもう1人の重要人物が、トム・ホランドの人生をメチャクチャにする最低牧師のロバート・パティンソンだ。最新作『TNENET テネット』(2020年)のナイスガイっぷりから一転、手当たり次第に女に手を出す色情狂を熱演。神の教えを拡大解釈して少女たちの心につけこみ、厄介ごとになれば、これまた神様パワーで乗り切る。もし本作に対して「キリスト教の話でしょう?」と不安を持っているなら、心配ご無用。彼のクズっぷりに宗教は関係ない。キリスト教とか関係なしに、「純粋さに付け込むクズ」として圧倒的な強度がある。ともかく“2020年度このクズがすごい!”は、彼が演じる最低牧師で決定だろう。周囲の心を神の説教一発で掴むカリスマ性と、信仰も国境も超えるクズっぷりが同居しているのは脅威だ。彼が演じる新しいバットマンが楽しみでならない。

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