向井理が伝えた足利義輝の無念と儚さ 『麒麟がくる』一つの季節の終わり

向井理が伝えた足利義輝の無念と儚さ 『麒麟がくる』一つの季節の終わり

 そして光秀は信長を連れてくることができなかったことを義輝に伝えなければならなかった。その様子から全てを察知した義輝は「夏は終わった。わしの夏は……」と観念にも似た言葉を残す。「欲を言えば、もっと早うに会いたかった。遅かった!」と訴えた義輝は、光秀と共に涙するのであった。

 早朝に人の気配を感じた義輝が、純白の寝衣に裸足で紅葉の散る庭に飛び降りたときの気持ちを「今朝起きて風の音に驚いた。いにしえの歌の通りじゃ。秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ(おどろかれぬる)」と話すが、このセリフの中の歌は古今和歌集に収録されているもので、立秋の日に詠まれた歌である。この歌は義輝の言葉通り「立秋とはいえ、秋が来たと目に見えて分かることはないけれど、風の音に秋が感じ取られハッと驚いた」という意味のもの。一つの季節の終わりを自分に重ねる義輝の心情が痛いほど伝わってくる。紅葉の舞う庭にただひとり美しくたたずむ義輝、そして孤独を噛み締める姿と一筋の光は、最後まで麒麟のくる世を願った男に相応しいシーンであった。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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