児嶋一哉、俳優として『半沢直樹』で見せる存在感 どんな作品にも溶け込む“愛されキャラ”

児嶋一哉、『半沢直樹』で見せる存在感

 児嶋が演じるのは『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)、『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)のように、いじられキャラとしての面白さが全面に出ている役もあれば、哀愁や憂いを纏う“笑い”とは無縁の役柄も。『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)では心臓病を抱えた息子を優しく支える父親を、そして湊かなえ原作の映画『少女』では、三島有紀子監督が「女子高生30人ぐらいいましたけど、みんな(児嶋のことが)嫌いでしたからね」(引用:アンジャッシュ児嶋のイヤなヤツぶりを「少女」監督が絶賛、「みんなが嫌ってた」 - 映画ナタリー)と語るほど、歪んだ教師役を務めた。

 同キャラクターは盗作した教え子の作品で小説家としての地位を築いた挙句、女子高生との交際発覚を機に自殺。生徒には大人としての顔を見せながら、倫理を侵す姿はゾッとするほど闇に満ちていた。児嶋はどの役柄も演じているというより、そのキャラクターが今も世界の片隅に存在しているかのように作品と溶け込む。以前「作品のスパイス役になれればって思ってるんです」(引用:【ぴいぷる】アンジャッシュ・児嶋一哉 出すぎず、濃すぎず…なぜか話題作に呼ばれる貴重キャラ「作品のスパイス役になれれば…」)と自身の演技論を語っていたが、料理を際立てる調味料としての児嶋という存在を確かに感じる作品ばかりだ。

 けして出演シーンは多くないが、制作側・視聴者側のどちらも「児嶋がいたら嬉しい」と渇望される理由がそこにある。“〇〇じゃない方芸人”という言葉も本来不名誉なものかもしれないが、児嶋の場合は単に存在感が薄いのではなく、どんな芸人と共演しても馴染む欲のなさが表れているのかもしれない。

 今期は『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)にずんの飯尾和樹や、ハナコの岡部大(岡部はNHK連続テレビ小説『エール』にも出演)、『竜の道』(カンテレ・フジテレビ系)に今野浩喜など、ドラマに数多くの芸人が出演しているが、中でもドランクドラゴンの塚地武雅やネプチューンの原田泰造から脈々と受け継がれてきた“演技派芸人”の名を児嶋は最も体現していると言っていいだろう。芸歴28年のベテランでも驕らず、自分のことのように相方のスキャンダルと向き合う人柄の良さから芸人界でも“愛されキャラ”の彼は、今もバラエティやドラマに引っ張りだこの様子で何だかほっこりする。今週はコロナの影響による制作の都合上、本編はお休みだが、児嶋はキャストやスタッフによる1時間生放送『生放送!!半沢直樹の恩返し』にも出演するようだ。堺や香川照之、片岡愛之助など錚々たる俳優陣が集う今夜も「児嶋だよ!」と謙虚に存在感をアピールし、私たちを笑わせてくれるだろう。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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