奈緒がヒロイン役で活躍 『事故物件 恐い間取り』『僕の好きな女の子』などでの功績

奈緒、『事故物件 恐い間取り』での功績

 話題のホラー映画『事故物件 恐い間取り』(以下、『事故物件』)において、作品の“恐怖感”を煽る役どころを担っている奈緒。NHKの朝ドラ『半分、青い。』(2018年)を機に、映画、ドラマ、舞台など、さまざまなメディアへの出演を重ねるごとに大きな注目を集める彼女だが、作品ごとでの彼女の功績は大きい。

 『事故物件』での奈緒は、とどのつまりヒロインである。売れないお笑いコンビ・ジョナサンズの唯一のファンであった梓(奈緒)は、このコンビの山野ヤマメ(亀梨和也)と中井大佐(瀬戸康史)の解散により胸を痛めるが、ひょんなことから日常的に彼らとの接点を得ることに。やがて、テレビ番組への出演を条件に「事故物件」に住むことになったヤマメを見守ることになるのだが、彼女には大きなヒミツがある。それは何を隠そう、“霊が見える”ということだ。こうして彼女は複雑な心境のまま、ヤマメらと交流を深めていくことになる……。

『事故物件 恐い間取り』(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

 本作における奈緒の存在はきわめて重要なものだ。なぜなら先に述べたように、“霊が見える”からである。“事故物件住みます芸人”として名を馳せていくヤマメよりも、彼女はいち早く霊の存在に気づくのだ。つまり、観客は主人公であるヤマメとともに時間を過ごすものの、「事故物件」で生まれる恐怖の入口へは奈緒が演じる梓とともに足を踏み入れていくことになる。これが冒頭で、奈緒が本作の“恐怖感”を煽る役どころであると述べた理由だ。恐怖に引き攣る表情や、安全地帯に居座る私たち観客の耳へと染み入る乱れた呼吸ーーそんな彼女の演技アプローチが、本作の恐怖の世界へと私たちを導いてくれるのだ。いわば奈緒が、恐怖のナビゲーターである。

 それに本作では、梓が霊にコントロールされ、ヤマメに襲いかかるという描写がある。ここは、演じる奈緒の現時点での本領発揮といったところだろう。まるで人格が切り替わるような“スイッチング演技”は、彼女の得意とするところである。穏やかな人格とサイコパス的な人格が同居し、次々と転換していく“尾野ちゃん”を演じた、『あなたの番です』(2019年、日本テレビ系)での奈緒の姿が端的に思い起こされることだろう(あの“リステリン攻撃”はトラウマになっている……)。これは彼女の初舞台となった『終わりのない』(2019年)にも近しいものが見られた。現在と未来、日常と宇宙とを往還する物語の展開にあわせ、ころころとキャラクターの性質を演じ分けていく奈緒の俳優としての才能は、生の舞台だからこそより堪能することができたものだ。

 そんな奈緒だが、彼女が大きく世間の注目を集めたのは、やはり朝ドラ『半分、青い。』である。あの作品が終了してからまだたったの2年だが、彼女の躍進ぶりはとどまることを知らない。同作では、ヒロイン(永野芽郁)の幼なじみにして大親友を演じ、一躍名を広めた。演じたのが本人と同じ名である菜生(なお)だったというのも大きいうえ、終始見せる柔和な笑顔と朗らかな語り口調は奈緒自身のイメージとして広く浸透していったことと思う。

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