『事故物件 恐い間取り』の背後にある、不気味な実話の数々 恐怖は私たちのすぐそばに

『事故物件』の背後にある“実話”の恐怖 

 実は、昔住んでいた家の隣のアパートに夜、救急車とパトカーが来ていたことがある。私はその時どこかを遊び歩いていて、実際にその現場を目撃したわけではない。その後なんとなく、病気による孤独死という風の噂を耳にした。真相はわからないが、私は大島てるのサイトにそのアパートが登録されていたらどうしようと、ずっと不安でいた。

 事故物件とは、そんな風にある日身近で突然生まれる。先日、こちらで『呪怨:呪いの家』のレビューを書かせていただいたが、まさにあの家は最強の事故物件。私は本当のことを言うと、誰よりもお化けとか心霊の類が怖くて苦手だ。もちろん、創作物としてのホラーは好きなので「事故物件住みます芸人」の松原タニシの著書を中田秀夫監督が映画化した本作『事故物件 恐い間取り』も、「怖いなあ、怖いなあ」と思いつつ、ワクワクしながら観た。人間とは誰しもが“怖いもの見たさ”で結局そういうものを手に取ってしまうものである。

 ただ本作は何を隠そう、そう言った“怖いもの見たさ”が引き起こす本当にあった怖い話がベース。映画を笑って観ていても、背後には笑えない実話があるのだ。

実話はもっと気味が悪かった

 本作は、ひょんなことから「事故物件住みます芸人」となった山野ヤマメ(亀梨和也)と、元相方であり、ともに事故物件に挑む中井(瀬戸康史)と、コンビ時代から二人のファンだった梓(奈緒)の3人の身に起こる恐怖体験が描かれている。もちろん、ヤマメは松原タニシをモデルにしたキャラクター。しかし、映画でヤマメがコンビを解消した中井は、実際は後輩芸人で、梓も映画オリジナルの登場人物であるように全てが全てノンフィクションというわけではない。そして彼が事故物件に住み始める流れも、映画と現実では少し違うのだ。

 ちなみに、実際はこうである。心斎橋の大丸劇場であった「北野誠のおまえら行くな。」のトークイベントに、大阪の若手芸人ゲストとして出ることになった松原タニシ。そこで話したエピソードが、「事故物件住みます芸人」誕生のきっかけとなった。その話とは、自分の知り合いのお笑い芸人に起きたことである。

 当時、松竹芸能の養成所がOCATの地下にあり、そこのライブに出るためのネタ見せオーディションがあった。松原タニシも参加することがあったと言う。しかしある時、そこにいつも来る芸人が来ないという事態が発生。その芸人の住むマンションが、養成所から近場だったので、仲間の芸人は彼を呼びに行った。

 部屋に辿りつくとドアは開いていた。入ってみると、中はカーテンで締め切られていて、たくさんのろうそくが立っていたそう。そして来なかった芸人は、そこでひたすら野菜を千切りにしていたらしい。日本語も通じない。彼はおかしくなってしまってその後、精神衰弱で事務所を退所、山口の実家に帰った。その後、そこが養成所の近くで安い物件なのでほかの松竹芸能の芸人が入居するも、また同じようなことが発生。その彼も、やはり日本語が通じず、精神に異常をきたして松竹を辞めたという。

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