『わたナギ』にみる歴代TBS火曜ドラマのエッセンス 新たな“アリ”を生み出す最終回に?
『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)が次回、ついに最終回を迎える。そんなタイミングに、メイ(多部未華子)がナギサさん(大森南朋)に、まさかのプロポーズ。家事代行サービスの契約切れを惜しんで結婚を提案する、という流れに『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)の第1話を思い出した視聴者も少なくなかったはずだ。
振り返ってみると『私の家政夫ナギサさん』は、『逃げ恥』にとどまらず、これまでの“TBS火曜ドラマ”の枠で描かれてきたエッセンスを踏襲しているように感じる。メイとナギサさんの生活ぶりは、お互いの欠けた部分やめんどくさいところを抱きしめるように暮らした『カルテット』を。「お母さんになりたい」というナギサさんの深い愛情は、血が繋がらなくとも誰かの人生を守りたいと願った『義母と娘のブルース』を。そして、年齢も性別も超えた友情を育んだ『G線上のあなたと私』を……。共通して伝わってくるのは「こうなくてはならない」という枠組みに自分を抑え込むのではなく、自分自身の「こうしたら心地よい」にまっすぐ突き進む勇気を持つということ。
恋愛感情はピンとこなくても、お互いにとって幸福度の高い生活を続けるために「結婚」という選択肢を取るのもアリだし、白黒つけないグレーなままを愛しく思える人生もアリ。血縁にはとらわれずに家族になることもアリだし、なんとも名前のつけがたい友情関係もアリ。たとえ今は、突拍子もない提案に思われたとしても。その一歩が、もしかしたら新しい時代の選択肢を広げることになるかもしれないのだから、と火曜ドラマの作品は語りかけてくれた。
その中で『私の家政夫ナギサさん』では、「自己責任」が叫ばれる今、何でも1人でなんとかしなければと抱え込みがちな現代人の心を解きほぐしていった。体や心が壊れてしまう前に、誰かを頼ってもアリ。それがプロであれば、たとえ「男性」の「22歳年上」の家政夫だろうとアリなのだ。本編で繰り返し描かれた「おじさんなのに家事が得意なの?」というやりとりも、もしかしたら一昔前には「おじさん=女性」「家事=仕事」という言葉だったかもしれない。そう考えると、いかに時代と共に“アリ”なものが変わっているのかに気づくことだろう。
メイにとっては、ナギサさんが唯一無二の存在で、ナギサさんもそのメイの人生を支えることに喜びを感じている。メイの家族にあったいざこざ、ナギサさんが職場の後輩に抱いていた悔しさ……それぞれを苦しめていたものに向き合い、役に立ちたいと動かずにはいられなかった日々。その相手を大事に思う感情を「愛」と呼ぶかはわからない。世間一般的に呼ばれる「恋」と呼べるかどうかは、もっとわからない。ただ、この生活を失うことは、もう想像ができないほどに、2人にとって大切なものになっている。ならば、いっそこの幸せを守るための結婚もアリなのではないか。