不老不死の傭兵軍団が悪人退治! 『オールド・ガード』がユニークな作品となった理由

『オールド・ガード』がユニークな理由

 不老不死の傭兵軍団が悪人退治! あらすじは以上! 先日配信された『タイラー・レイク -命の奪還-(2020年)もそうだが、何はともあれNetflixオリジナルのアクション映画は潔い。今回ご紹介する『オールド・ガード』(2020年)も、先に書いた通り非常にシンプルなストーリーだ。一方で「不老不死の傭兵軍団が悪人退治!」以上のものも、本作には確かにある。つまりは押さえる所は押さえ、同時に挑戦的でもあるわけで。この類の映画としては理想的な形ではなかろうか。

 まず「押さえるべきところ」から見ていこう。本作には「不老不死の傭兵軍団が悪人退治!」と聞いて期待する要素が盛りだくさん。まず軍団のリーダーは、シャーリーズ・セロン。今の世界で、指ぬきグローブをカッコよく着こなせる数少ない俳優の1人だ。彼女が演じる最長老の戦士アンディは、銃と近接格闘技の達人。さらに切り札の武器は、遥か昔から使っている斧! 何を隠そう斧なのである! 洗練された近代兵器で全身を固めつつ、大昔から使っているファンタジー武器でのワンポイントコーデは、ジーコでなくとも「カンペキだ!」と言わざるを得ない。そんな彼女につき従うのは、どこか食えない中年男性に、十字軍で敵同士として出会い、いつしか付き合うようになったゲイのカップル。そしてアフガニスタンで初めて死んで蘇生した新米女兵士。非常にキャラが立った顔ぶれだ。後述するが、このチームの空気が非常に良い。

 そして、人外モノには必須の「特殊部隊壊滅シーン」である。『エイリアン2』(1986年)以来、特殊部隊は超人・怪物に蹂躙されるのがマナー。本作も掴みで特殊部隊シーンがあり、セロンの長い手足が冴えわたる良質な格闘アクションに仕上がっている。アンディは不死者だが、腕力は(鍛え抜かれてはいるけれど)普通の人間の領域だ。なのでファイトスタイルは力任せではなく、技術を優先。体格で勝る相手をテンポよく、なおかつ観ていて説得力のある「技術」で制圧するのは「爽快」の一言に尽きる。一連の格闘アクションだけでもオツリがくるだろう。

 しかし本作の一番の魅力は、先にもチラっと触れた主人公チームの面々のキャラクター性だ。主人公たちは不老不死だが、死ぬのに慣れ過ぎて、生きるのに疲れている。この「生きるのに疲れている」という点が本作をユニークなものにしている。「もう生きていたくないよ」「もう戦い疲れたよ」と愚痴をこぼしながら、とはいえ「死にたくはない」のも事実。チームは全員人間ではないが、妙に人間くさく、その関係性には一種の「緩さ」が漂う。現代を生きる普通の人間と何ら変わらない。まるで「働きたくねぇなぁ」「こんな仕事に何の意味があるんだ」とボヤく労働10年選手である(私もそういう年齢なので、妙に親近感が湧いた)。そんな程よく気怠いチームに、死にたてのフレッシュな、しかし右も左も分からない新卒が飛び込んできて、やがて各々が自分の人生と働き方に向き合い……と、いわば一種の「お仕事映画」にもなっているのだ。

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