宮藤官九郎脚本『JOKE』は粋なホラー作品? 生田斗真の一人芝居とは思えない臨場感

 ITの進化、AIの導入に加え、新型コロナウイルスの存在が、テクノロジーを浸透させることに拍車をかけた。今や大企業も続々とテレワークに切り替える中、PCのモニターが仕事相手になっている人も多いだろう。そんな中、NHKでは「配信」や「AI」をキーワードにしたスペシャルドラマ『JOKE~2022パニック配信!』が放送された。脚本を務めたのは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』、NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(以下、『いだてん』)で脚本を担当した宮藤官九郎。そして主演を、宮藤とは、映画『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』(2014年)、『うぬぼれ刑事』(TBS系)、『いだてん』などでもタッグを組んできた生田斗真が務めた。生田演じるお笑い芸人の沢井竜一が、驚くような展開で事件に巻き込まれていく様子を描く。

 昨今のコロナ禍でイレギュラーな対応を強いられたのはテレビの世界も同じであり、“リモート”を武器にしたCMやドラマが数多く製作された。ポカリスエットの合唱のCMは、こんな時期でもアイデアで勝負し新作を創り上げたことでSNSでも話題となり、秋元康が企画・原案を務めた『リモートで殺される』(日本テレビ系)や脚本家の坂元裕二作の『リモートドラマ Living』(NHK総合)なども注目を集めた。そんな数あるリモートドラマ中で、本作は引けを取らない作品となっただろう。

 漫才コンビ「俺んち」のボケを担当する沢井は、タレントエッセイで大成するも、「パクリ」と言われ炎上騒ぎを起こす。相方ばかりがテレビで活躍し、本人はというと、動画配信サイトで「俺んちチャンネル」を運営する日々。沢井の部屋の全てはAIで管理されており、「マイルス」というスマートスピーカーに全てを任せていた。さらに「俺んちチャンネル」の配信では、相方の代わりに漫才に特化したAIロボット「JOKE」を使用し、沢井、「俺んちチャンネル」の視聴者、JOKEの三つ巴で配信を成立させていた。しかし、事件は突然起きる。配信の最中に沢井の嫁と娘が誘拐され、不審な電話が何度も沢井の元にかかってくるように。さらに、頼んでいないはずの宅配サービスが家の前で列を成していた。物語はこれらの“迷惑行為”の犯人を突き止めるというのが序盤の流れであったが……。

 だが、それだけにはとどまらないのが宮藤官九郎脚本だ。ラストで、一度は不仲になった沢井と相方の坂根明(柄本時生)のコンビ愛を描き、ドラマ内の配信視聴者も、お茶の間の視聴者も感動の嵐に巻き込む……と思いきや、真のラストはAI「マイルス」の仕組んだ衝撃の展開で、「あっ!」と声を上げたくなるようなクライマックスが仕込まれていた。人情話だけでなく、スリルやサスペンス要素が詰まった作風も魅力だろう。まさに官九郎節のなせる技であった。

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