松本まりか、お岩さんを怪演! 小芝風花主演『妖怪シェアハウス』がポップに描く“女性の連帯”

『妖怪シェアハウス』松本まりかの“怪演”

 テレビ朝日・土曜ナイトドラマ枠『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)の放送がスタートした。ヒロイン・目黒澪を演じるのは、これが民放ドラマ初主演となった小芝風花。底意地の悪い徹底的な“クズ彼氏”にお金も仕事も家も奪われてしまった澪が、個性あふれる妖怪たちの手助けによって徐々に救済を得ていくさまが描かれる。

 その第1話は、借金取りに追われ、キャリーケースを引きずりながら住宅街を逃げ走る澪の姿から始まる。息も絶え絶えになんとか彼氏・健太郎(柾木玲弥)の住む家にたどり着く彼女だったが、そこには健太郎のほかに別の女性の姿があり、あろうことか彼氏から「おまえは2番目なんだよ」とはっきり二股宣言をされてしまう……。その後に明かされることだが、澪は彼氏のために借金をしたり会社をクビになってしまったり、挙げ句の果てには家も追い出されるなど、すべてを捧げて尽くしてきたのだ。それが、いいように利用されていただけだったと知ってしまう苦しすぎる顛末。クズ男に捨てられ、澪は失意のなか道端に倒れてしまう。そんな彼女のもとに救いの存在として現れるのが、伊和/お岩さん(松本まりか)という妖怪だった。

 本作の脚本を務めるのは、『ケイゾク』や『SPEC』(ともにTBS系)などのヒット作を多数手がけてきた西荻弓絵。ジャンルもののなかに抜け感のあるコメディリリーフを織り込む独特のストーリー展開は本作でも健在のようで、「男性に苦しめられる女性」の姿は切実ながらも重たすぎないように前半でぎゅっと凝縮されて描かれていたように思う。それよりも目立ったのは、状況を打開する“女性同士の連帯”をストレートに描いていること。同じく男性(夫)に苦しめられた境遇を持つ妖怪・お岩さんを中心に、座敷童子(池谷のぶえ)やぬらりひょん(大倉孝二)、酒呑童子(毎熊克哉)といった妖怪たちと交流していくことで、徐々に澪は勇気を見出していく。

 もちろん、「人間」と「妖怪」といった、種族を超えた心の交感というテーマが根底にはあるはずだから、本作の女性のエンパワメント的なストーリーは男性と女性を安易に分け隔てるものでもないのだろう。それでも、健太郎のクズさを称して“ミソジニー”という言葉がさらっと放り込まれるなど、『妖怪シェアハウス』というドラマの強い意思が垣間見えたような第1話。土曜ナイトドラマの系譜というよりはむしろ、小芝が主演を務めていた『トクサツガガガ』や、『だから私は推しました』、『伝説のお母さん』など近年のNHKドラマが描いてきたものに近い印象も持たせる。

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