『はちどり』異例の拡大公開 「収容人数50%以内」期間を象徴するヒットに

『はちどり』異例の拡大公開 「収容人数50%以内」期間を象徴するヒットに

 先週末は前週から引き続き『千と千尋の神隠し』、『もののけ姫』、『風の谷のナウシカ』とスタジオジブリの宮崎駿監督作品がトップ3を独占。初登場作品は大森立嗣監督、長澤まさみ主演の『MOTHER マザー』のみと、全体的に変動が少ない動員ランキングとなった。つまり、まだ劇場に観客はちゃんと戻ってきていないということだ。現在の興行を支えているのは、コロナ以前から足繁く劇場に通っていた熱心な映画ファンが中心となっているのだろう。

 そんな状況を象徴するヒット作といえるのが、コロナ禍によって万全なプロモーションがおこなえなかったにもかかわらず、営業自粛明けの6月20日に公開されてからじわじわとソーシャルメディアで作品の評判が広がり、興行通信社が発表しているミニシアターランキングで公開2週目は7位、先週末は4位までランクアップしてきたキム・ボラ監督の『はちどり』だ。本来は4月25日に日本公開される予定だった同作。当初は東京のユーロスペースでの1館スタートで、全国順次30館規模の公開が予定されていたが、ウィークデイの上映回も満席(といっても収容人数の上限は50%以内だが)が続出するユーロスペースでの大ヒットを受けて、全国70~80館規模の拡大公開が決定。コロナ以降の新作不足という背景はあるものの、7月3日からはギャガの配給協力を受けて、TOHOシネマズの各スクリーンでもかかるという異例の事態となっている。

 1994年のソウルを舞台に、中学2年生の少女が同級生や塾講師との出会いやすれ違いを通して自分の外側にある世界を認識していく過程を繊細に描いた『はちどり』。その概要だけを説明すると地味なアートハウス系の作品と思われるかもしれないが、近年の韓国映画界の充実ぶりを知らしめる、映画的な豊かさと幅広い観客への吸引力を両立させた見事な作品だ。

 『はちどり』で注目すべきなのは、日本で話題となってきたこれまでの韓国映画のように、キャストの知名度や、監督の世界的な評価が呼び水となった作品ではないところだ。監督・脚本だけでなく、製作まで手がけているまだ30代のキム・ボラにとって本作が長編デビュー作。キャストもほとんど全員が日本では無名だ。このような作品が日本でもヒットするようになったのは、『パラサイト 半地下の家族』の大ヒットもきっと寄与して、一般的な映画ファンの多くが「韓国で評判となった作品」にごく当たり前のように信頼と関心を寄せるようになってきたことを示しているのではないだろうか。

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