復活上映をより楽しむための背景解説! いま観ても変わらない『ホット・ファズ』の魅力

復活上映をより楽しむための背景解説! いま観ても変わらない『ホット・ファズ』の魅力

 いまや、『ミッション:インポッシプル』シリーズで、トム・クルーズ演じるスパイに助け出される“ヒロイン”ベンジー役でお馴染みのサイモン・ペッグ。そして、『ベイビー・ドライバー』(2017年)で大ヒットを達成し、その世界観で多くのファンを獲得した映画監督エドガー・ライト。

 ともに世界的に知られるようになった二人だが、彼らは地元のイギリスで、主演俳優、監督として何度も一部の映画ファンを熱狂させる映画を作ってきた存在でもある。その中の一つであり、ファンの支持も厚い『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』が、この度、日本で“復活上映”される。ここでは、そんな本作を十分楽しむための背景と、いま観ても変わらない魅力を語っていきたい。

 映画監督エドガー・ライトが世界的なデビューを果たし、その作家性の核としているのが、“スリー・フレーバー・コルネット”と呼ばれる作品群である。コルネットとは、イギリスなどヨーロッパで親しまれているコーンアイスの総称で、日本でいえばジャイアントコーンにあたるお菓子だ。その3つのフレーバーとは、エドガー・ライトとサイモン・ペッグ、そして俳優ニック・フロストを加えた3人の味のこと。つまりこれらの映画は、彼ら仲良しトリオの個性がもたらす、親しみの持てる庶民的なお菓子のような映画ということなのだ。そして本作『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』は、その2番目の作品にあたる。

 学生時代から映像作品を撮っていたエドガー・ライト、コメディー俳優サイモン・ペッグ、ニック・フロストの3人は、イギリスのシチュエーション・コメディー『SPACED ~俺たちルームシェアリング~』をともに作り上げ、そろって人気を獲得した仲間だ。この成功を基に、彼らは自分たちの持ち味(フレーバー)がハーモニーを生み出す長編映画を撮ることになる。それが、一部の映画ファンにとって伝説となっているゾンビ・コメディー映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)だった。

 ジョージ・A・ロメロ監督の歴史的作品『ゾンビ』(1978年)など、数々のゾンビ映画のパロディが連発する内容は、“B級映画”といわれるジャンル作品への愛情と、若いクリエイターならではの感性、イギリスの皮肉なユーモアが炸裂。なかでも、パブで飲んだくれてバカ話ばかりしているような男たちを好意的に描き、ゾンビが大挙して迫りくる世界の終末に彼らが大活躍するという趣向が喜ばれ、愛されるカルト映画になったのだ。

 この“スリー・フレーバー・コルネット”第1作の成功を受けて作られたのが、本作『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』である。この作品もパブを舞台にした酔いどれたちの話なのかと思いきや、冒頭、警察の制服に身を包み颯爽と現れるサイモン・ペッグの姿に目を奪われる。今回、彼が演じるのは、意外にも超有能なロンドン首都警察の警官、ニコラスなのだ。

 だが、彼はあまりにも有能過ぎた……。警察本部では、ニコラスが一人で事件を解決してしまうため、他の警官たちや上司の存在が霞むという理由で、田舎の警察署へ転属させられてしまうのだ。何という理不尽。

 田舎町サンドフォードに着いたニコラスは、ニック・フロスト演じる、街の警察署長の息子でのんきな性格の警官ダニーと組まされ、長い間“事件ゼロ”というのどかな町で、バザーの警備をしたり、逃げた白鳥を捕まえるという、やり手の警官には相応しくない仕事ばかりを担当させられていく。そんな環境で功を焦ったニコラスは大きな失敗を経験し、ついにパブでダニーと酒を飲み酔っ払うという、結局は“いつもの感じ”になってしまう。むしろ、これが彼らの映画の本来のかたちだと言ってよいだろう。

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