『ショーン・オブ・ザ・デッド』元祖“伏線回収ゾンビコメディ”の魅力とは? E・ライト監督の映画愛

 みなさん、突然ですがゾンビ映画って「~オブ・ザ・デッド」というタイトルが多いですよね。これはゾンビの生みの親とも呼ばれている監督ジョージ・A・ロメロが手がけた『ゾンビ(Dawn of the Dead)』からの派生や、オマージュ的な作品に付けられているものです。最近では、原題は全然違うのにゾンビものだから、という理由だけで邦題が「~オブ・ザ・デッド」になるものがあります。ちなみに、あの『カメラを止めるな!』も英語題は『ONE CUT OF THE DEAD』なんです。

 『カメラを止めるな!』は伏線回収の気持ち良さ、コメディとして扱うゾンビ映画ものとして日本で大ヒットしました。しかし、実は今日より15年前すでに伏線回収しまくりのゾンビコメディが日本に上陸……したのにDVDスルーされていたのです。

 世界中でカルト的人気を誇る本作。ついに3月29日より満を辞して15年ぶりにスクリーンで上映されるのです。お待たせしました、みなさん、『ショーン・オブ・ザ・デッド』です! これを記念に、本作を愛して止まないファンの一人として、映画の魅力を余すことなく語らせてください。

 全然かっこよくない主人公が、ダメダメな感じでも男になる物語

 本作は、イギリスを舞台に29歳のダメダメな主人公ショーンと、彼のマブダチである葉っぱ売りのエドが突如起きたゾンビアポカリプスの中をサバイブする映画です。

 もう、このショーンのダメさが映画の魅力(というか内容)の大部分を占めるんじゃないでしょうか。29にもなって、学生時代からの友人とルームシェア。彼女のリズとは、デートでいつも同じウィンチェスターのパブにしか連れて行かないものだから振られてしまう。家電量販店で務め、仕事に対しても特に意欲はない。ゾンビに立ち向かう時も、最初はビビって遠くからレコードとかを投げつけて、しかも全然当たらないというヘボさ。

 ショーンとは、リズの言葉を借りると「アラサーなんだから、いい加減大人になってくれない?」と各方面から詰められそうな男の代表なのです。しかし、そんな彼が「大切な者を亡くしたことで、一念発起する」というヒーロー映画のテンプレのような物語を通して英雄になる姿が良い。後半、何故か急にかっこよくなる感じとか、まさにそれです。

 そして主人公だけではなく、周りのサブキャラクターもそれぞれ個性が強く、それが活かされているのが本作の良いところです。

 エドガー・ライトによるロメロへのオマージュ

 本作は、先述のロメロ監督へのオマージュが多く見られます。まず、映画の冒頭で流れているのは『ゾンビ』の曲。それだけでなく、『ゾンビ』の主人公ピーターを演じた俳優、ケン・フォリーへのリスペクトを込めてか、ショーンの務める家電量販店の名前は「Foree Electric」です。また、同作に登場するゾンビのボブの名前を、コルネットアイスやソーダを近所のコンビニに買いに行く途中にあるピザ屋「Bub’s Pizzas」として使っているのです。

 さらに、ショーンの母親の名前バーバラにも注目。これはロメロ監督による『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のヒロインの名前です。しかも劇中、エドがショーンの母を救いに行く際、電話口で「We’re coming to get you, Barbara!(今助けに行くからね、バーバラ!)」という台詞を言います。これは、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の冒頭でジョニーが、墓場を怖がる妹バーバラに対して「They’re coming to get you, Barbara.(お化けがやってくるぞ、バーバラ)」という台詞のパロディなのです。

 こんな風に、大好きなロメロ監督の作品をとにかく自分の作品でパロディ化した男、それがエドガー・ライト監督です。とにかく映画愛に溢れる彼の作風は、本作『ショーン・オブ・ザ・デッド』から始まる「コルネット」(劇中に登場するアイス)三部作の中でよくわかります。

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