『15年後のラブソング』ジェシー・ペレッツ監督が明かす、イーサン・ホークとの意外な関係性

『15年後のラブソング』監督が語る

 現在公開中の映画『15年後のラブソング』。欧米で人気を誇る小説家ニック・ホーンビィの原作をもとに、人生のリアルに押し流されながらも、どうにか新しい一歩を踏み出そうともがく“大人になりきれない”男女3人を、ローズ・バーン、イーサン・ホーク、クリス・オダウドが演じるヒューマンドラマだ。

 本作の監督は、90年代初頭に人気を博したロックバンド、レモンヘッズ初代ベーシストだったジェシー・ペレッツ。レモンヘッズは、1986年にボストンで結成されたオルタナ・ロックを代表するバンドだ。本作でホークが演じている、忽然と表舞台から姿を消したロックスターのタッカー・クロウが活躍していた90年代初頭は、レモンヘッズがブレイクして人気絶頂だった時期。ペレッツ監督は、バンドのメジャーデビュー後に脱退し、映像の道に進んだ。

 今回リアルサウンド映画部では、ペレッツ監督にオンラインインタビュー。本作を映画化する上で意識した点や、イーサン・ホークとの意外な関係性を明かしてくれた。

ジェシー・ペレッツ監督

「アニーを強く自立した女性のキャラクターに」

ーーニック・ホーンビィによる原作を映画化した本作ですが、映像化にあたり意識した点を教えてください。

ジェシー・ペレッツ(以下、ペレッツ):この作品には、僕の妹が脚本として参加しているんだけど、そのことで得ることができた男性と女性の視点のバランスはすごく大切にしたよ。ここ10年くらい、女性のクリエイターやプロデューサーと仕事をしたり、女性が主人公の作品を手がけてきたけど、この作品はたまたまプロデューサーが4人とも男性で、メインのキャラクターが女性という企画で、その中で妹と仕事をするのはとてもワクワクした。アニーを強く自立した女性のキャラクターとして作り上げたかった。物語の中でも、彼女自身の勝利が待っているようなストーリーにしていきたかったんだけど、もともとの脚本はそういう部分が薄かったんだ。エンディングも、アニーがイギリスでの生活を捨てて、タッカーとアメリカに行ってしまうというものだった。僕はそこに違和感を感じたんだ。今の時代、自分の人生を捨てて男性を追うような女性のキャラクターを、観客は多分見たくないだろうと思って。でもプロデューサーたちはそうは思わなかったらしく、かなり長くハードなバトルを経て、このエンディングに変更できたから満足しているよ。だから、一番留意したのはアニーのキャラクターだね。アニーがどんな意図を持っているのか、そして自立したキャラクターとして、ローズ(・バーン)や妹たちと作っていったんだ。

ーーローズ・バーン、イーサン・ホーク、クリス・オダウトの3人はまさにハマり役でした。この三角関係を成立させる上で重要視していたことを教えてください。

ペレッツ:まずひとつは、最初にアニーとダンカンの2人の関係が、再評価するタイミングが近づいてきているというふうに見せることだね。それがあることによって、アニーの中にタッカーに惹かれる気持ちが生まれる余地が作られるわけで、タッカーがそこには存在していないんだけど、2人の関係の間にいるようにすることで、そのあと実際に出会うタイミングで、タッカーがフィクションから本物になっていく。そして彼によってアニーがエンパワーメントを経験するという部分を大切にしていたね。

ーータッカー・クロウは伝説のミュージシャンでありながら、自分の子どもたちと向き合えていないという側面も持ち合わせています。タッカーの人間性を描く上で何か意識したことはありますか?

ペレッツ:もともとの脚本では、タッカーの娘であるリジーがほとんど出てこなくなってしまっていて、それが非常にもったいないと感じていた。タッカーは、娘に対して父親を全うすることができなかった。だけど、娘がもう一度チャンスを与えてくれようとしていて、同時に、一緒に連れてくるジャクソンだけには、いい父であろうとしているという側面がある。もとの脚本で、中盤からリジーが全く出てこなかったのも残念だった。なぜなら彼女との関係からも、タッカーの贖罪の物語を結ぶことができるし、タッカーが自分の失敗を認めて、さらに彼女のために寄り添うという物語を作らなければならないと思ったから、シーンを加えたんだ。実はこのシーンは原作にもなかったんだけど、僕が原作を読んでいてで唯一気になっていた箇所だからそうしたんだ。

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