『ミッドナイト・ゴスペル』なぜ話題に? 新感覚アニメーションが可能にした、壮大なテーマの表現

『ミッドナイト・ゴスペル』なぜ話題に?

 4月よりNetflixで配信が始まったアニメーション『ミッドナイト・ゴスペル』が一部で大きな話題を集めている。ポップでグロテスクでサイケデリック、トリップ感満載の映像は幻覚症状を見ていると錯覚させられ、鑑賞中に少し危ない高揚感すら覚える。筆者は強烈な変性意識に襲われ、地面から足が浮遊したような気分になった。やや浮足立った気持ちをなるべく抑えつつ、本作の魅力について語ってみたい。

インタビューをアニメートした新感覚のアニメーション・ドキュメンタリー

 本作は、『アドベンチャー・タイム』で知られるペンデルトン・ウォードによる1話約30分、全8話からなるアニメーションシリーズだ。ウォードがダンカン・トラッセルというコメディアンが配信しているインタビュー形式のポッドキャスト『Duncan Trussell Family Hour』に触発され、そのインタビューをアニメーションにすることを思いつき実現した。基本的に1話完結で、トラッセル自身が主人公のクランシーを演じている。

 主人公のクランシーはスペースキャスター(ポッドキャスターの宇宙版)で、様々な平行世界へシミュレーターを通して訪れ、そこで出会った人々にインタビューするという筋書きだ。そのインタビュー内容は、過去に配信されたトラッセルのポッドキャストから取られている。

 その平行世界は様々な理由で滅亡の危機に瀕しているという設定だ。ゾンビが大量発生していたり、地表が水に沈んでいたりと様々なシチュエーションを幻惑的なアニメーションで描き、そこでクランシーがとんでもない目に遭いながらユーモア混じりにインタビューを続けてゆく。インタビューのテーマはゲストに応じて様々で、薬物依存症のスペシャリストや作家、瞑想のプロや冤罪で死刑判決を受けた人物から、トラッセル本人の母まで多彩な顔ぶれだ。

 ペンデルトン・ウォードは、ダンカン・トラッセルのポッドキャストを高く評価しており、2013年ごろから聴いていたという。ウォード曰くとラッセルは「瞑想について2時間通して面白おかしく語れる」センスを持っているそうで、そんな彼のトークにアニメーションをつけたら面白くなるのではないかと思ったそうだ(参照:Light at the End of the Apocalypse: Pen Ward & Duncan Trussell Preach ‘The Midnight Gospel’ - ANIMATION MAGAZINE)。

 実際のインタビューからアニメーションを起こしているという点で、本作はアニメーション・ドキュメンタリーの一種と言えるだろう。映像の記録性・事実性に依拠する従来の実写ドキュメンタリーは、カメラの目の前で起こっていないことを観客に提示することは困難であった。しかし、アニメーション・ドキュメンタリーは、過去の記憶などの主観的イメージを映像で再構築することによって、より鮮烈に証言者の体験を共有させることができる。アリ・フォルマンの『戦場でワルツを』で一躍有名になった手法・ジャンルだが、近年では実写のドキュメンタリー作品でも一部にアニメーションを導入してこの効果を狙う作品も増えている(日本の最近の作品だと『プリズン・サークル』や『i -新聞記者ドキュメント-』など)。

 本作も過去に収録されたインタビュー音声が事実性を担保し、その音声内容を主観的なイメージで映像を構築し、イメージを拡大することに成功している。

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