ミニシアター・エイド基金、総額3億3,102万5,487円を達成 1団体あたりの平均額は306万円

ミニシアター・エイド基金、3億円超え達成

 4月13日より開催されたクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が、5月15日23時59分にて終了。総額3億3,102万5,487円を達成した。

 「ミニシアター・エイド基金」は、政府からの外出自粛要請が続く中、閉館の危機にさらされている全国の小規模映画館、ミニシアターを守るため、映画監督の深田晃司、濱口竜介が発起人となり、有志メンバーで立ち上げたプロジェクト。

 集まった金額は、117劇場102団体へ、5月末に第1回目の分配、6月末に第2回目の分配を行う予定だ。1団体あたりの平均額は306万円となる。

クラウドファンディング終了の御礼コメント

深田晃司(発起人/映画監督/独立映画鍋共同代表)

ミニシアター・エイド基金運営のひとり、深田晃司です。
すでにご存知の通り、ミニシアター・エイド基金はこの1カ月、まったく想定していなかったほどの大きな盛り上がりの中にあり続けました。
率直に言うと、私たちは最初は1カ月をかけてじっくり1億円を越えていこう、と話していました。そんな私たちの考えは本当に甘かったこと、映画ファンのミニシアターへの思いを舐めていたことは、開始3日で1億円を越えてしまったことで明らかでした。
しかし、1億を越え、2億を越え、設定した目標値を超えるたびに私たちはSNSに「ありがとうございます」と書くわけですがこれがどうにも座りがよくないのです。この金額は、これまで多くの映画ファンにかけがえのない思い出を残し、コロナ禍においてもそれをなくしたくないと思わせるだけの大切な仕事をしてきたミニシアターだからこそ集まった記憶と希望の結晶です。なので、ただそのきっかけに携わったいわば「仲介人」にしか過ぎない私たちが、どこの誰の代表を気取って「ありがとう」とか言っているのだろう、と。
ただ、多くの監督や俳優から賛同の声が集まり、また私の知るスタッフからもたくさんの喜びの声が寄せられるなかで、次第に考えが変わりました。今回、コロナ禍を生き抜く力をもらったのはミニシアターだけではない、映画に携わる私たち全員なのだと。なので、力をもらったひとりとして、堂々と言わせて頂きます。
本当にありがとうございました!

濱口竜介(映画監督・発起人)

一劇場運営団体につき平均300万。この額は、コロナ禍を乗り切る上で十分多いとは言えません。それでも、少なすぎるものでもありません。そう言えるところまでは来たのは、本当に一人ひとりの御志があってのことです。ただ、それだけ多くの人が動いたのは「ミニシアター」という場がずっと、誰かの人生を変えたり、支えたりする経験を作り続けてきたからにほかなりません。サイト上やSNS に寄せられたメッセージの数々から、映画館で生まれたとても多くの「映画と私」の関係があり、それこそが映画や文化の「社会的価値」の内実なのだ、という当たり前のことに改めて気付かされました。この金額が多すぎるものではない、というもう一つの理由は、これはミニシアターで仕事に従事する人々がしてきたことに対して当然払われるべきであった対価(の一部)だからです。「ミニシアター・エイド基金」がたとえ束の間であっても、劇場運営者にとっての精神安定剤となり、そこで働く人たちの暮らしを支えるお金となることを、心より願っています。その間に、次なる事態へ向けて態勢を整えましょう。ここに至るまで、あらゆる形で支援をしてくださった皆様に、心よりの御礼を申し上げます。本当に、ありがとうございました。

大高健志(発起人/MOTION GALLERY代表)

開始前には想定していなかった物凄い金額の応援を頂き、基金メンバー一同本当にありがたい気持ちでいっぱいです。コレクターの方の応援メッセージ、そしてミニシアターの方のお言葉を読めば読むほど、今回参加頂いたコレクターお一人お一人のアクションが、これからの全国のミニシアターの大きな支えの1つになっていくのではないかと強く感じております。学生のときから人生に悩んでいたり苦しいときには、ミニシアターで映画を見て、色々と整理をしていたような教会のような大切でたくさんの思い出がある場所。それが自分の「ミニシアターと私」なのですが、そんな深いつながりのある「ミニシアターと私」が、支援して頂いた29926人おひとりおひとりの人生にあるのだと思います。そのようなそれぞれのオリジナルな想いを携え、ミニシアターが人生にとても大事なんだという1点のもとにこんなに多く人達が連帯したという事実にただひたすら感動しています。だからこそ、より民主的な社会になるのか、それともビッグ・ブラザー的なものを受け入れる社会になるのかの大きな分かれ目になると言われる『ニューノーマル』な世界には、これまで以上にミニシアターが果たす役割はとても重要だとも感じています。今回のミニシアター・エイド基金は、コロナ禍で苦境に陥った映画文化を支える為の狼煙であって、ゴールではありません。ですが、希望を抱かせて頂けるとても大きな狼煙であったと感じております。
本当にありがとうございました。

高田聡(Incline LLP)

まずはお一人お一人がご賛同くださり大きな運動となったことに、発起人の1人でありな
がら驚畏の念を感じ、深く感謝致します。
ご賛同頂いた方々にも少なからずいらっしゃると思いますが、私も1人で映画を見ることが多いです。それはとても私的な行為でありながら、映画館という開かれた場所で他人と同じ時間を過ごすことに、かえって映画に没入できる居心地の良さを感じます。「ミニシアター・エイド基金」を通じてそういった無言の連帯意識と同じような気持ちを覚えました。
一方で映画を見るという行為は、目の前のスクリーンと、それをみている自分に加え、後ろの映写機からスクリーンに映画を投射する第三の視点を意識することがあります。この場にこの映画を持ってきて、かけてくれている人がいるのだと、言葉を交わさないながら見守られている暖かさを感じるのです。自分にとって当たり前のようにあると思っていたそのような大切で個人的な場所が、ある日なくなってしまうかもしれない。急に襲われたそんな危機感からミニシアターを救いたいという思いを共有できた気がして、誰しもが大変な思いをしているこの状況下に、とても幸福に思います。ありがとうございました。

岡本英之(映画プロデューサー/Incline LLP)

冒頭、「ミニシアター・エイド基金」への数多くのご支援、ご賛同に心より感謝を申し上げます。発起人への同調のもと任にあたっており、これ以上を私から付け加えるのも蛇足かとは存じますが、ひとつ文章をさらなる御礼の言葉に変えさせていただきたく思います。私は岡山県の玉野市という街で育ち、大人になってからも3年半を過ごしました。休日となればバスに乗り、岡山市のシネマ・クレールへと向かいます。閉塞感とともに過ごした時期でしたが、ひとたびスクリーンの暗闇に身を置けば、自分も世界の一部であること、世界は繋がっていることを再確認することができました。そして、いつも背中を押されるような気持ちになったものです。押されて入っていくのは、まだ明るい時間の馴染みの酒場でしたが、店主や映画好きの仲間たちと交わす言葉は、当時も今も私の心の支えのひとつです。全国津々浦々、皆さまそれぞれの心の中にたくさんの物語が刻まれていることと思います。また、これから映画と出会う若い方々のためにも、まずはこのプロジェクトをしっかりと完遂できるよう引き続き取り組んで参ります。最後に運営からの声として、広報の佐々木瑠郁さん、西原孝至監督への謝意を告げさせてください。ミニシアターでお会いしましょう。

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