伊藤沙莉の共感できるヒロインが成功の要因 『いいね!光源氏くん』に詰まったラブコメのセオリー

『光源氏くん』に詰まったラブコメのセオリー

 そして、ラブコメで、実はもっとも重要なのが、ヒロインのキャラクターではないだろうか。ヒロインは、観ているものに「これは私の分身だ」と思わせるところがないといけない。誰かに「これは私だ」と思わせるには、どこか弱みや欠点を持っていたりして、そんなコンプレックスだらけの自分自身とつきあいながらも懸命に生きていることが必要となる。

 『花より男子』の牧野つくしであれば、お金持ちだらけの学園の中で、自分だけが庶民で、そこに違和感を持ちつつも強くたくましく生きていたりするし、『逃げ恥』の森山みくりであれば、大学院を卒業したが正社員の職にありつけず、また自分が「小賢しい」と言われる性質であることが、彼女自身を縛っていたりもする。しかし、こうした部分が、視聴者に共感されるところとなる。

 本作の沙織もまた、明るくて美人の妹・詩織(入山杏奈)がいることで、自分に自信が持てないというコンプレックスを持っている。そのことで、光くんに対しても、距離を置くところもある。やたらと、自己に対しても光くんに対しても冷静なところがあり、ひとりで「つっこみ」を入れることも多い。こうした役を伊藤沙莉が演じたことで、コミカルで荒唐無稽な設定の物語の中にも、現代を生きるOLのリアリティが増している印象も受ける。

 番組もいよいよ佳境となり、ハワイで光が出会った物理学者のフィリップ(厚切りジェイソン)や、彼らを追う謎の組織も登場し、ミステリーのハラハラドキドキも加わって佳境を迎えている。そんな中、光と沙織の関係性もどうなるのか、最後まで見逃せない展開が続きそうだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
よるドラ『いいね!光源氏くん』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜(29分・全8回)
出演:千葉雄大、伊藤沙莉、桐山漣、入山杏奈、神尾楓珠、小手伸也ほか
原作:えすとえむ
脚本:あべ美佳
音楽:小畑貴裕
演出:小中和哉 田中諭
制作統括:管原浩(NHK)、竹内敬明(テイク・ファイブ)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/hikarugenji/
公式Twitter:https://twitter.com/nhk_purpleamore

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