ルッソ兄弟らクリエイターの原点 『コミ・カレ!!』はアメリカのコメディドラマ入門に最適

 外出自粛の世の中になり、ニーズが高まっているストリーミングサービス。自宅にいる時間が増えたならば、最新作だけではなく今こそ過去の名作にも注目をという声も多く上がっている現在、アメリカ中心に人気のコメディドラマがNetflixで4月1日より配信開始となった。『アベンジャーズ/エンドゲーム』など名作を生み出しマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を支えた、ルッソ兄弟も多くのエピソードを監督している『コミ・カレ!!』(全6シーズン)である。

 今年に入り、今日のTOP10の表示を始めたNetflixだが、正直なところやはり日本で根強い人気なのはアニメで、TOP10の過半数を占めることが多い。日本ではなかなか海外のコメディは受けていない状況はあるが、これから映画や海外ドラマを楽しむライトなファンの方にこそぜひ観てほしいのが、アメリカのコメディドラマ(特にシットコム)であることを、今回は人気ドラマ『コミ・カレ!!』を通して改めて注目していきたい。

原題『Community』の通り、アメリカをぎゅっと凝縮

『コミ・カレ!!』シーズン1(字幕版)

 『コミ・カレ!!』は、2009年〜2015年にNBCで放送された人気コメディドラマ。いわゆるシットコムと呼ばれるジャンルだ。シットコムとは、基本的に1話完結で、登場人物も一定(ゲスト出演はあり)、主な舞台は固定というのが特徴だ。今回紹介する『コミ・カレ!!』は、学歴詐称で業務停止処分を受けたジェフ(ジョエル・マクヘイル)が大学卒業資格を取るために、誰でも通えるコミュニティカレッジに入学し、そこで出会った学生や教師との交流をコミカルに描く。注目したいのは、何といっても登場人物たちの設定である。原題『Community』(日本語で地域社会、共同体の意)の名のごとく、アメリカに生きている人にとって「いるよね、こういう人!」という特徴を表現している。

 例えば、先ほど紹介した学歴詐称のジェフは40歳の白人男性で、「努力をしたことがない」と豪語するナルシスト弁護士。この「努力したことがない」というのは、白人男性という優位な立場を自覚なしに社会の上層で生きてきた愚かな男性として描かれている。そのほかにも、チアリーダーで優等生だったにも関わらず、集中力を高める薬を服用し薬物依存に陥り、コミュニティカレッジで再起を図るアニー(アリソン・ブリー)や、高校時代アメフトでクオーターバックとして活躍しプロムキングだったにも関わらず、あることがきっかけで落ちぶれてしまい、いまだに未練たらしく高校のジャケットを着ながらコミュニティカレッジに通うトロイ(ドナルド・グローヴァー)、CEOを退任しコミュニティカレッジで第二の人生を歩もうとするが、セクシズム甚だしい老害キャラのピアース(チェビー・チェイス)などなど。優等生や、プロムキング、CEOなど肩書きは良さそうでも実はそれぞれ問題を抱えているキャラを登場させ、しかも第1話冒頭から「コミュニティカレッジは負け犬の通う場所だよ~」と学部長(ジム・ラッシュ)が軽やかにスピーチするもんだから痛烈である。2009年開始のドラマながら、現在の作品にも(良いか悪いか)描かれ続けている社会問題をコミカルに取り上げて指摘する作風は、これから映画・海外ドラマを観始める方にとって導入編としても馴染みやすいのではないだろうか。

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