『エール』ヒロイン・音の物語をじっくり描いた第2週 前向きな姿勢と強さの裏にあった出会い

『エール』ヒロインの物語を描いた第2週

 さらに、この2人の共通点は“個々を大切にする”という考えの人々に恵まれたところにもある。大正デモクラシーの掲げる自由主義的な思想はまだまだ世の中に浸透しているとは言えないが、そんな中でも裕一に作曲の道を勧めた藤堂(森山直太朗)の「違いを気にするな」という言葉や、それを受け入れ家業とは関係のない“作曲”を応援した裕一の家庭、音に「自分で行きなさい」と声掛けをする安隆の育て方が、2人の基盤を作っている。こうした時代にいち早く馴染んでいった家庭に生まれ、経済的にも恵まれていた2人は、自身の才能や興味関心に心を委ねる余裕があった。このような環境に身を置いたことが、彼らの後の人生の中でプラスに影響したことは言うまでもないだろう。

 そして音と環の出会いも忘れてはならない。環の存在は、音に強さを授け、音が歌手を目指すきっかけにもなる。音は環から「目の前のことに全力を尽くしなさい」という言葉をもらい、不服であった『かぐや姫』の“おじいさん2”の配役を演じることに前向きになることができた。環との出会いは音を大きく成長させ、このおかげで音は父亡き後も夢を持って自分の足で強く歩みを進めることのできる女性になる。音の前向きな姿勢と強さの裏には、こうした大切な人との出会いがあるのだ。

 第2週のラストには、商業高校に通うことになった裕一の姿が描かれる。いよいよ窪田正孝が登場し、ドラマは裕一の青年期にフォーカスされる。子役たちの輝きに溢れた第1週、第2週を終え、『エール』はいよいよ本格的に羽ばたき始める。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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