『ファーストクライ』は“母の心”にどこまで寄り添えるか 出産の尊さと責任をめぐる物語

『ファーストクライ』“母の心”をどこまで描く

 『ファーストクライ 母子救命救急班』(日本テレビ系)の制作が発表されたとき、楽しみな一方で「どうなるだろう……」という一抹の疑念もあった。

 それは、『コウノドリ』(TBS系)という産婦人科ドラマの金字塔があることに加え、自分自身がつい最近、妊娠・出産を経験したからだ。実際、第1話の放送後には、SNSで産婦人科医によるツッコミブログがバズり、それに乗じて経産婦からも否定的な意見が上がっていた。

 個人的にも、第1話で未受診妊婦の産み逃げ、妊娠高血圧症候群と常位胎盤早期剥離による緊急帝王切開が2件、産声による心拍再開など、少々詰め込みすぎではないかと思っていた。

 印象が変わったのは、第2話のあるセリフだ。過去に子どもを遺棄した経験がある鮎川奈央(紺野彩夏)が、外国人技能実習生の妊婦メイ・トゥ(宮崎あみさ)が産んだ赤ちゃんを抱いたときに、涙ながらにつぶやいた「ごめんね」の一言。奈央の言葉には、赤ちゃんを温かい場所で抱き止めてあげられなかったことへの大きな後悔が詰まっていた。

 また、第2話ではメイと奈央のストーリーのほかに、長く不妊治療に向き合ってきた矢田歩美(三倉茉奈)についても触れられた。赤ちゃんを抱けた人、抱けなかった人の切実な想いを見せた回だった。

 第4話では、胎児の死と向き合う2人の女性が描かれた。まだ生まれていなくても、胎児と一心同体で生活を送る妊婦にとって、赤ちゃんを失うことがどれだけ辛いか、迫り来る現実にどう向き合うのかを丁寧に描写していた。

 新生児医の富永航(濱正悟)を含め、先天性上気道閉塞症候群の赤ちゃんを救うべく一致団結しながらも、奇跡を起こすことができなかった展開と、数時間後に子どもの命を失うと理解したうえで、親子3人が共に過ごす場面には涙が止まらなかった。

 第2話から第4話の各話で物語のピークにあったのは、親から子への清らかな愛情だ。本作は、妊娠・出産という営みを前にしたときの、子どもへの愛情から生まれる喜びや悲しみ、苦しみなど、さまざまな感情を描くドラマなのだ。

 登場人物たちが、子どもと向き合っている姿を見ていると、はじめて息子を抱いたときに噴水のように湧き上がってきた愛おしさを思い出す。本作を通して、親にとって子どもとはどんな存在なのかに思いを馳せてもらえたら、なんて考えてしまうのだ。

 ただ、ここで懸念点を1つ書かせてほしい。

 本作は妊娠をしてもどうすればいいのかわからないまま、未受診になってしまう妊婦が多数登場する。未受診妊婦の問題として語られるとき、妊娠・出産の責任を負わされるのは女性だ。大きな責任に対して不安を抱える女性に寄り添う男性の姿が、あまりにも少なくはないだろうか。

 妊娠には、女性だけでなく男性も関わっている。現実世界でも起きているこの問題に、本作は切り込むのか、どんな答えを出すのかによって、最終的な評価が左右されるのではないだろうか。

 赤ちゃんを前にした女性の感情を、細やかに表現しようという心意気を感じるからこそ、期待を込めて、最後まで見届けたい。

■放送情報
『ファーストクライ 母子救命救急班』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:比嘉愛未、松島聡、前田敦子、真矢ミキ、岡部たかし、山村紅葉、濱正悟、遠山俊也、徳永えり、川西賢志郎、優希美青、珠城りょう、瞳水ひまり、俵木藤汰、松本恵莉紗、伊藤麻実子、細井じゅん
脚本:浜田秀哉
脚本:浜田秀哉
演出:大谷太郎、上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗、山田勇人、遠藤光貴、大垣一穂(ザ・ワークス)
音楽:菅野祐悟
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/firstcry/
公式X(旧Twitter):https://x.com/firstcry_ntv
公式Instagram:https://www.instagram.com/firstcry_ntv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@firstcry_ntv

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