窪田正孝×二階堂ふみは“理想の夫婦”に? 『エール』放送を前に朝ドラ“男性主人公”作品を振り返る

朝ドラ“男性主人公”作品を振り返る

 窪田正孝が主演を務めるNHK連続テレビ小説『エール』が3月30日からスタートする。全国高校野球の大会の歌「栄冠は君に輝く」「六甲おろし(阪神タイガースの歌)」「鐘の鳴る丘」など、数多くの作品を手がけた作曲家、古関裕而がモデルで、朝ドラにおいて男性主人公は玉山鉄二主演『マッサン』(2014年9月〜15年3月)以来6年ぶりとなる。

 朝ドラ102作目の本作を含め、男性が主人公の作品は過去に11作あり、記念すべき第1作『娘と私』(1961年4月〜62年3月)の主人公が男性の芸術家というのは意外な事実。人気作家・獅子文六の自伝的小説が原作となっており、主人公の仕事の葛藤や娘との関係を描いたこの作品は、後に映画化もされている。

 獅子文六のほか、川端康成や武者小路実篤の原作小説をベースとした文芸路線から始まった朝ドラは、意外にも7作目の『旅路』まで、主人公は男性と女性が交互に描かれていた。

 具体的に男性が主演を務めた作品名を挙げていくと、第1作『娘と私』、第3作『あかつき』(1963年4月〜64年3月)、第5作『たまゆら』(1965年4月〜66年4月)、第7作『旅路』(1967年4月~68年3月)、第32作『ロマンス』(1984年4月~9月)、第33作『心はいつもラムネ色』(1984年10月~85年3月)、第35作『いちばん太鼓』(1985年10月~86年4月)、第44作『凛々と』(1990年10月~91年3月)、第53作『走らんか!』(1995年10月~96年3月)、そして第91作『マッサン』という順番になる。

 朝ドラが始まって間もない第7作目まではともかく、興味深いのは『ロマンス』『心はいつもラムネ色』、1作空けて『いちばん太鼓』と男性主人公が続いた時期だ。おそらく、平均視聴率が52.6%、最高視聴率62.9%と朝ドラに留まらずテレビドラマの最高視聴率を誇る第31作『おしん』が、それらの作品の前にあったのが大きかったのだろう。振り返ってみると、「朝ドラ=女性の一代記」という『おしん』の印象を、変化させようという狙いがあったように思える。

 以後、『凛々と』『走らんか!』を間にはさみながら、『マッサン』に至るまで、“朝ドラヒロイン”の物語が描かれ続けていった。『マッサン』に関しても、「男性主人公」というよりも「夫婦」を押し出した作品であっただけに、亀山政春(玉山鉄二)の妻・エリーを演じたシャーロット・ケイト・フォックスが主人公と思っていた視聴者も多いかも知れない。

 『マッサン』で描かれたような、「夢に向かって夫婦二人三脚で一歩ずつ進んでいく」という展開は、漫画家・水木しげるの妻、武良布枝のエッセイを原案とした第82作『ゲゲゲの女房』(2010年3月〜9月)以来、人気のテーマだ。朝ドラ史上初めて幕末を描いた第93作『あさが来た』(2015年9月〜16年3月)では、ヒロイン・あさ(波留)が実業家として成長していく姿をサポートする進次郎(玉木宏)に多くの視聴者が魅了された。第99作『まんぷく』(2018年10月〜19年3月)では、即席ラーメンを発明する萬平(長谷川博己)とヒロイン・福子(安藤サクラ)が、失敗と成功を繰り返す繰り返す振り幅の大きい日常に釘付けとなった。

 いずれの夫婦にも共通していたのは、男性よりも女性の方が逆境に立ち向かっていく“強さ”を持ったキャラクターだったということだろう。作品ごとに形は違えど、寄り添い支え合う夫婦像が、視聴者にとってその時々の“理想の夫婦モデル”になっていたように思う。

 事前に発表されている情報を見る限り、今回の『エール』もまた、少し気弱な夫・裕一(窪田正孝)を、しっかり者の妻・音(二階堂ふみ)が支えていくという物語になりそうだ。

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