『FOLLOWERS』『全裸監督』などにみる、日本のNetflixオリジナルシリーズの方向性

『FOLLOWERS』『全裸監督』の方向性

 Netflixの国内ドラマは、話題の小説を映画監督が映像化した『火花』や『夫のちんぽが入らない』と、『アンダーウェア』や『宇宙を駆けるよだか』のようなかつては民放のプライムタイムでも放送できたが今は作るのが難しくなった作品、そして、明石家さんまが企画・プロデュースしたジミー大西を中心に80年代のお笑い業界を描いた『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』や村西とおるのノンフィクションを元に80年代のアダルトビデオ業界の勃興期を描いた『全裸監督』といった実録モノの3パターンに別れるのだが、もっとも話題を集めたのが過激さを全面に打ち出した『全裸監督』だ。

Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督』

 『全裸監督』のテイストはその後作られた、園子温監督のオリジナル映画『愛なき森で叫べ』や『FOLLOWERS』にも引き継がれている。この2作は各監督の代表作、園子温ならば『冷たい熱帯魚』、蜷川実花ならば『ヘルタースケルター』の世界観を拡大したような作品となっている。

 『愛なき森で叫べ』は2002年に起きた北九州監禁殺人事件を下敷きにしたドラマだが、『FOLLOWERS』を蜷川の自伝的作品だと考えるならば、どちらも『全裸監督』と同じ実録モノで、そこに現代日本のアイコンが詰め込まれている。

 『全裸監督』以降の作品を見ていると、Netflixを見ている国外の視聴者が求める日本的なものの内実がよくわかる。それは高度消費社会によって肥大した80~90年代の日本のポップカルチャーで、歌舞伎町と秋葉原と裏原宿で構成されたファンタジーとしての日本である。例えるなら、日本刀を持ったセーラー服の美少女がヤクザと戦う姿で、つまりクエンティン・タランティーノ監督が『キル・ビル Vol.1』で描いた日本だ。

 そう考えると『FOLLOWERS』でタランティーノがリスペクトされていた理由もよく分かる。つまり、海外から見たクール・ジャパン的なものを煮詰めると『FOLLOWERS』になるのだろう。これはアニメでいうと『AKIRA』、『攻殻機動隊』、『カウボーイビバップ』といった作品なのだが、参照される作品が90年代で止まっているのがなんとも歯がゆい。つまり、過去の日本を自己模倣するような企画しか求められていないのだ。

Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』

 ネットのDVDレンタルサービスから始まったこともあってか、Netflixの作品は、企画こそセンセーショナルだが、中身は大味で、豪華なVシネマという印象が強く、作品も玉石混交だ。しかし、現在もっとも勢いのある場所であることは間違いない。

 『全裸監督』や『FOLLOWERS』に批判が集まるのは、目をそむけることができない存在感があるからだ。それは時に作品のクオリティ以上に重要なもので、今のテレビドラマにはないものだ。

 そういった作品を生み出す場所が国内から失われつつある以上、たとえ過去の日本を擬態するような企画しか通らなくても今は作り続けるしかない。やがて若いクリエイターが撮る機会が増えていけば、かつてVシネマで黒沢清や三池崇史がユニークな作品を生み出したような新しい流れが生まれるかもしれない。次にドラマ化されるのはJホラーの『呪怨』だが、監督は『きみの鳥はうたえる』の三宅唱だから期待している。

 新しいものが生まれる土壌がNetflixにはある。だったら、その可能性に賭けてみたいというのが、正直な気持ちである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』
Netflixにて全世界190か国へ独占配信中
監督:蜷川実花
出演:中谷美紀、池田エライザ、夏木マリ、板谷由夏、コムアイ、中島美嘉、浅野忠信、上杉柊平、金子ノブアキ、眞島秀和、笠松将、ゆうたろう
Netflix:https://www.netflix.com/jp/

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