日本アカデミー最有力は『翔んで埼玉』か『蜜蜂と遠雷』? 候補作から考える日本映画の現在地

日本アカデミー賞から考える日本映画の現在

 「第43回日本アカデミー賞授賞式」が3月6日に開催される。『翔んで埼玉』『蜜蜂と遠雷』『新聞記者』『閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー』『キングダム』が優秀作品賞を受賞し、この5作品の中から最優秀作品賞が選ばれる。今年の日本アカデミー賞の優秀作品賞から、日本映画の現状はどのように占えるのか? 今年の最優秀作品賞の予想とあわせて、ライターの久保田和馬氏に話を聞いた。

 今年の優秀作品賞の顔ぶれについて、久保田氏は「5本中2本が東宝(『蜜蜂と遠雷』『キングダム』)、2本が東映(『翔んで埼玉』『閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー』)の配給作品ですよね。そして『新聞記者』はスターサンズ配給で、松竹配給の作品が一つもなかったのは意外でした。今年のラインナップを見ると、大本命と言えるものがなく、若干地味な印象は否めませんが、去年の『万引き家族』のような大きな話題を呼んだ作品がなかった年ということかもしれません」と語る。

『翔んで埼玉』(c)2019映画「翔んで埼玉」製作委員会

 そんな優秀作品賞の中から最優秀作品賞に輝く作品を、久保田氏は『翔んで埼玉』だと予想する。「作品の純粋な完成度や若手の監督をフックアップするという意味でも、『蜜蜂と遠雷』を最有力作品に挙げたいんですが、『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督は優秀監督賞に入っていないんです。日本アカデミー賞最優秀作品賞は、全部監督賞の候補監督の作品でもあるというジンクスがあります。参考までにキネ旬ベスト10では『蜜蜂と遠雷』は5位、ブルーリボン賞を『翔んで埼玉』が受賞しており、この2作が有力かなと。ダークホースとしてはインディペンデント枠とも言える『新聞記者』を挙げたいです」

『蜜蜂と遠雷』(c)2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

 優秀作品賞に限らず、優秀監督賞、優秀主演男優賞、優秀脚本賞……といった他の部門に目を向けてみると、多くの優秀賞受賞が、『翔んで埼玉』『蜜蜂と遠雷』『新聞記者』『閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー』『キングダム』の5作を中心にピックアップされているように感じる。こうした現状については、「さすがに取り上げる作品数が少なすぎるのではないかと危惧せざるを得ないです。授賞式を毎年観ていても、アメリカのいわゆるセレモニーというよりテレビ番組の一端という印象は否めないですね。アカデミー賞にしても、フランスのセザール賞にしてもなんらかの政治は絡むものなので、そのこと自体は悪いことではないんですが、授賞式の番組として数字をあげるためにポップな作品を重視しすぎてしまう傾向はあるのではないでしょうか?」と分析する。

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