『伝説のお母さん』が共感を呼ぶ理由 子育てのリアルがてんこ盛りの社会派ドラマ

『伝説のお母さん』リアルママの声が沁みる

 一方、第3話では、仲間のベラ(MEGUMI)が仕事で大きなプロジェクトに参加することになり、息子のベルをメイが預かることに。ベラは、息子を完璧に家事をこなす子どもに育てており、あろうことかメイはそんなベルが「可哀想だ」と訴える。育児に正解なんてないのに、自分の育児観を押しつけるママ友という構図が妙にリアルだ。

 そんな中、ベラは子持ちという理由でプロジェクトから外されてしまう。これは「マミートラック」といい、女性が出産によって出世コースから外され、単調な仕事コースを回らされてしまうこと。働きたいけど、保育所に預けることができない。どうにか働き始めても、周りに迷惑をかけてしまう。割り切って一念発起しても、大きな仕事を任せてもらえない。この八方塞がりは、決して空想の話ではないから恐ろしい。

 子育てでしんどいのは、肉体的なこと以上に「自分はダメな母親なんじゃないか」と責めてしまうといった精神的な部分が大きい。育児のドタバタを描きつつ、そんな母親の感情にフィーチャーしている点が、このドラマが共感を呼ぶ理由だろう。また、劇中に登場する魔界の教育番組でMCを務めるのは『おかあさんといっしょ』に出演していた、よしおにいさん&りさおねえさん。「少子化は、人間界を滅ぼすカギになると思うんだっ!」と、おにいさん&おねえさんが元気いっぱいに話す姿も、実にシュールだ。

 第1話で、夫は言う。「子育て、俺、向いてない。お前は魔法を使ってラクに子育てできるのかもしれないけどさ」と。あくまで劇中のセリフだが、現実世界においても“お母さんは魔法使いだ”と思われがち。お母さんなんだから、なんでも解決できるよね、といった具合に。でも、お母さんだって赤ちゃんがなんで泣いているかなんてわからないし、昼夜なく授乳をして、オムツを替えて、おもらししたら着替えをさせて、やっと落ち着いた合間に家事をこなす。毎日が戦いの連続なのだ。

 子育てをする母親は、きっと誰もがRPGの主人公。どんなに高い壁や強敵が現れようと、我が子の笑顔をエネルギー源に、今日も今日とて立ち向かう。頼もしいパーティ(仲間)が力を貸してくれること、そして、よりよい育児環境が整うことを願いながら。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。小学生男児2人の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■放送情報
よるドラ『伝説のお母さん』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜23:59
出演:前田敦子、玉置玲央、井之脇海、MEGUMI、片山友希、前原瑞樹、大東駿介、大倉孝二ほか
原作:かねもと『伝説のお母さん』
脚本:玉田真也、大池容子
制作統括:松川博敬、篠原圭
プロデューサー:上田明子
演出:村橋直樹、佃尚能、二見大輔
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/densetsu/

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