『伝説のお母さん』が共感を呼ぶ理由 子育てのリアルがてんこ盛りの社会派ドラマ

『伝説のお母さん』リアルママの声が沁みる

 RPGの世界を舞台に新米ママの奮闘を描く『伝説のお母さん』(NHK総合)に、子育て世代を中心に共感の声があがっている。かくいう私も、二児の母。ドラマを観ると母親の誰もが経験する“あの頃”を思い出し、「本当にそう」と頷きすぎて首がもげそうだ。

 本作は、かねもとの同名コミックを実写化したファンタジードラマ。かつて魔王を倒した伝説の魔法使い・メイ(前田敦子)は、専業主婦としてワンオペ育児に奮闘していた。そんな中、魔王が復活。再び魔王討伐のために招集されたメイが、“育児”と“世界平和”の両立を目指していく。突拍子もないコメディ作品のようだが、実際には子育てのリアルがてんこ盛りの社会派ドラマだ。

 物語は、復活した魔王討伐のため、メイに声がかかるところから始まる。冒険に参加したいメイだが、0歳児を預ける保育所がすぐに見つかるはずもなく。小さい子どもを抱える母親は、どんなにやりたいことがあっても、自分の意志だけではどうにもならない。そんなメイに降りかかる「あなたの力は、家に眠らせておくのはもったいない」という言葉……これが、とてつもなく沁みる。

 母親が身を粉にして育児しても、認めてもらえる機会は少ない。いや、もちろん褒めてもらいたくて育児をしているわけではないし、そもそも自分が産みたくて産んだのだから、その責任はすべて自分にある。そんなことはわかっているが、それでも人は、誰かに自分の力を認めてもらいたいものだ。

 結局、夫(玉置玲央)の失業を機にメイは魔王討伐に出かけるのだが、帰宅したメイの前に広がるのは、泣き叫ぶ娘の姿。聞けばミルクも離乳食もあげていない、オムツは替えていない、タバコの吸い殻は置きっぱなし。思わず「何してるんですか!」と声を上げれば、「ヒステリー? 勘弁してくれよ」とヘラヘラ。さすがにここまでの夫は稀だろうが、薄っすらと身に覚えがあり、この時のメイの感情が理解できるママは多いことだろう。

 保育園には入れない、夫は使い物にならない、となれば、子どもを連れて冒険に出るしかない。だが第2話、娘が泣き出したせいで敵に敗北してしまったことで、メイは自分が討伐メンバーにいないほうがいいのではと悩み始める。これも、ワーキングマザーあるある。「気にしないで」と言われても、どこか申し訳ないと思い続けなければならない日々。みんなに迷惑をかけて、赤ちゃんの世話も十分にできず、それでも働く自分はワガママなんじゃないかと落ち込むまでがワンセットといえるかもしれない。

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