コワモテで悪役もこなす小澤征悦 『パパ恋』でコメディ要員として新たな魅力を発揮!?
極め付きは、主演・山田涼介との『もみ冬』のご縁からなのか、日テレ→テレ朝へと放送局も飛びこし、謎の出演を遂げていた、岡田惠和脚本『セミオトコ』である。
出演と言っても、セリフは一切ナシ。それどころか、役名もなければ、物語で担う役どころも、スポットがあたるシーンも、存在理由も、全くない。なぜなら、彼が演じたのは、山田演じるセミオが7日間を過ごす「うつせみ荘」の壁に飾ってある肖像画だったのだから。
いやに強い目ヂカラ+濃い顔の迫力ある肖像画だと思ったら、小澤征悦本人で、にもかかわらず本編では何の説明もナシ。この『もみ冬』長男の思いがけない登場に、同作ファンや山田ファンが沸いていると、番組公式Twitterが「はい、友情出演、いや、夢の兄弟出演です! ありがとうー、ゆきちゃん!」とつぶやく一幕もあった。
言葉を発することもなく、目ヂカラ・顔ヂカラと、念力のようにじわじわ滲出するオーラだけで、存在感を示す小澤。彼がいかにコメディ向きかがよくわかるワンポイントの出演だった。
こうして近年の連ドラでの活躍を振り返ってみると、エリートの転落や、傷心・小心、さらには「絵」になり切ることで見せた無の境地など、悲しさや静けさの中に貪欲に笑いを取り入れてきたことがよくわかる。
恵まれた体格や、言わずと知れた家柄の良さから滲み出る品や自由気ままさ、坊ちゃんぽさは、生まれ持ったもの。それを受け入れ、年齢を重ねることで練りこまれ、円熟味が出たことによって、真逆のイメージである小物感や哀れさを表現するとき、ギャップが大きな笑いを生むのだろう。
『パパがも一度恋をした』の序盤では、おっさん多恵子を愛するべく、真剣に悩み、猪突猛進に妙な努力を重ねる滑稽な姿が光っている。塚地との息もピッタリで、くどいほど重ねるボケは、アドリブじゃないかとところどころ思うほど、楽しんで吾郎を生きているのがわかる。
可愛くおかしく悲しいコワモテ俳優として開花した小澤征悦の活躍は、今後ますます増えることだろう。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
『パパがも一度恋をした』
東海テレビ・フジテレビ系にて、毎週土曜23:40〜放送
出演:小澤征悦、塚地武雅、本上まなみ、福本莉子、根本りつ子、山田明郷、黒木啓司(EXILE/EXILE THE SECOND)、池津祥子、塚本高史、麿赤兒
原作:阿部潤「パパがも一度恋をした」(小学館『ビッグスピリッツコミックス』刊)
脚本:田中眞一、福島三郎、山下すばる
企画:市野直親(東海テレビ)
制作著作:The icon
制作:東海テレビ
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