『アライブ』松下奈緒が歩む“その後の人生” 人はいかにして愛する者の死を乗り越えるのか

『アライブ』松下奈緒が歩む“その後”

 事故以来寝たきりの状態がつづいていた夫・匠(中村俊介)が息を引き取り、悲しみを抱えながら何とか日常を取り戻そうと仕事に打ち込む心(松下奈緒)。しかし薫(木村佳乃)をはじめとした周囲の人々は、心が無理をしていることにすぐ気が付いてしまう。そんな中、匠の父・京太郎(北大路欣也)が警察に保護されたとの連絡が入るのだ。30日に放送されたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』第4話は、「人はいかにして大切な人の死を乗り越えていくか」という点を見つめる秀逸なエピソードとなった。

 息子である匠の葬儀で参列者と大声で談笑したり、心が病院を休んでいることを忘れていつも通り夕飯を作りに来るなど、匠の死の後から様子がおかしい京太郎。ある日喫茶店で仕事をしていた彼は、突然取り乱し、そして酒に酔って匠が事故に遭った現場へ足を運び大声で泣いてしまう。迎えにきた心に「ついにボケが始まったか」と京太郎自らが笑い飛ばす通り、身近な人の死によって生じる精神的なストレスで認知症が引き起こされるというケースは多くある。そして同時に、心が心配するように同様の形でうつ病を発症するというケースも少なくない。それはもちろん京太郎に限らず、息子の漣(桑名愛斗)のためにも自分は強くあろうと意気込む心も同様だ。

 そんな中で、腫瘍内科部長の阿久津(木下ほうか)は、妻を半年前に亡くした悲しみとじっくり向き合ってきた男性を心に会わせる。そして「一方的に励ますのではなく、悲しみに寄り添うこと」と、“グリーフケア”について語り始める。それは誰かと死別した時に訪れる喪失感と、そこから立ち直ろうと努力することによって陥る不安定さを、第三者が寄り添いケアするということ。大事なポイントとして阿久津が挙げるのは3つ。自然な感情である悲しみを肯定すること、悲しみを表現すること、そして死を受け入れるための儀式を行うこと。

 本作のメインテーマとなるのは「がん治療を専門とする医師たちの姿を通して、がん治療の現在を映し出す」ということであり、一般的な医療ドラマでは患者の病を治すということに重きが置かれるのが常である。しかし本作の場合は、より長い目で、患者やその家族に待ち受ける“その後の人生”というドラマ性にも目が向けられているのだ。しかもそれを、あえてがん患者ではない匠の死を通し、主人公である心がその死を乗り越えていく様子が描かれたというのは見逃せない部分だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる